過敏性大腸症候群(IBS)

腸は食べ物を消化・吸収するだけでなく、不要なものを便として体の外に排泄してくれます。そのためには、食べ物を肛門方向に移動させるための腸の収縮運動と腸の変化を感じとる知覚機能が必要です。

収縮運動や知覚機能は脳と腸の間の情報交換により制御されています。ストレスなどによって不安状態になると、腸の収縮運動が激しくなり、また、痛みを感じやすい知覚過敏状態になります。この状態が強いことがIBSの特徴です。実際に、大腸に風船を入れて膨らませて刺激すると、健康な人は強く刺激しないと腹痛を感じないのに対し、IBSの患者さんでは弱い刺激で腹痛が起こってしまいます。

IBSになる原因はわかっていません。しかし、細菌やウイルスによる感染性腸炎にかかった場合、回復後にIBSになりやすいことが知られています。

症状としては、

①いつもお腹が張る
②ゴロゴロなる(腹鳴)
③下痢っぽい
④腹痛
⑤ときに便秘
⑥何となく体がだるい
⑦疲れやすい

などがありますが、主要な症状は慢性の腹痛をはじめとする様々な腹部症状や下痢、便秘などの便通異常であります。

過敏性大腸症候群は、もともと器質的な症状ではなく機能異常なので、単なる薬物療法だけではなく心身両面の治療が必要になります。症状に応じてツボを選択することで、症状の改善に著しい効果があるだけではなく、心身も総会になります。

過敏性大腸症候群は、機能的な疾患なので小さなきっかけで改善することが多く、東洋医学の得意な分野でもあります。その意味ではツボ療法が適していると考えます。

◆主要なツボ

背中 「厥陰兪」、「心兪」、「膈兪」、「脾兪」
腰部 「腎兪」、「志室」、「大腸兪」
首  「天柱」、「大椎」
腹部 「巨闕」、「中脘」、「腹結」、「期門」、「大巨」、「関元」
足  「足三里」、「三陰交」、「復溜」、「太谿」
手  「合谷」

などがポイントになります。

◆治療法

まずは、背中、腰の治療を行います。とりわけ大腸の機能を整える「大腸兪」は大切なツボなので、念入りに治療を行います。

加えて、肩こりがあれば「厥陰兪」、胃の痛みがあれば「胃兪」、さらに体力を増強するのであれば「志室」に治療を行います。

「天柱」と「大椎」はこのような症状にはつきものの頭痛や頭重を抑える働きがあるので、治療に加えます。

次に腹部の施術に移ります。へその下3寸にある「関元」は、人間が生まれつき持つ先天の元気をつかさどるツボとして、また小腸の募穴としても非常に重要なツボで、全身の循環状態を改善するとともに、精力増強、活力をつけるツボとして知られています。一通り腹部の施術が終わりましたら、お腹に按腹を行います。お腹の中央に手のひらを横向きに置き、こねるような感じで舟をこぐようにもんで、お腹を大きく波打たせます。

最後に、同じように大腸の機能を整える手の「合谷」、足では「足三里」、冷えをとる「三陰交」、お腹の張りをとる「復溜」、体力を増強する「太谿」などを処置します。

過敏性大腸症候群は鍼灸治療が効果的であります。灸を行うのであれば、知熱灸でツボ一か所につき5~7壮すえます。腹部の「天枢」、「大巨」、腰部の「腎兪」、「大腸兪」、手の「合谷」を対象に毎日3週間程度続けますと、気分がすっきりして、お腹の張り、下痢や便秘などの不快症状がとれます。鍼治療にも同様の効果があります。