心身症

心身症は、「発病や治療に関して、精神的要因が強く関係している身体的病態」と心身医学会で定義されています。平たく言えば、心が原因で起こる体の病気といえます。典型的なのが、胃・十二指腸潰瘍や一部の高血圧などで、精神的ストレスや過労を排除するだけでも、かなり、あるいは全く改善されてしまうことがあります。

心身症にかかった場合の身体症状は、人によってまちまちであります。胃・十二指腸潰瘍の多くが精神的ストレスに由来するものであることは、今日では常識にすらなっていますが、その他、高血圧や心臓病など循環器系の異常、気管支喘息など呼吸器系の異常、インポテンツ、冷感症、生理不順など泌尿器・生殖器系にも病変はあらわれます。つまり、これらに共通する特徴は、病的な症状が心と体が相互に作用しあってあらわれるということであります。

したがって、治療法も身体面への治療に加えて、心理療法も行われるのが特徴であります。症状が強い場合には、専門医による入院治療が必要になります。

ツボ療法においては、身体症状を取り除くことに重点を置き、体の状態を正常に戻すことで心的な面の好転を期待します。

身体症状としては、循環器系、呼吸器系、消化器系などに異常が多くみられるので、それぞれの経路にあるツボに、鍼灸治療やマッサージ・指圧による治療をします。

-鍼灸治療編

◆主要なツボ

病状によってツボは使い分けますが、基本的なツボは、

頭    「百会
背中   「身柱」、「肺兪」、「厥陰兪
腰    「腎兪
体の前面 「天突」、「膻中」、「巨闕」、「中脘」、「大巨
足    「足三里

などであります。

◆治療法

・循環器系に異常がみられる場合

動悸が速い、心筋梗塞のように胸が痛む、不整脈がある、といった循環器系に異常がみられる場合は、心の臓の働きに効果があるツボとして、背中の「心兪」、胸の「膻中」、みぞおちの「巨闕」を用います。

また、循環器系に影響を与えるツボとして、「百会」、「身柱」などもあわせて使います。

東洋医学では、任脉や督脉など体の中心を走る経路には循環器系を調整する重要なはたらきがあると考えており、ここに挙げた各ツボはそれぞれ任脉と督脉の経路上にあって、循環器系の改善に大変有効であります。これらに加えて「脾兪」を使いますと、気持ちの高ぶりなどにも非常に効果があります。

・呼吸器系に疾患があるとき

気管支喘息など呼吸器系に疾患がみられる場合は、先に述べた循環器系のツボに加えて、喉の「天突」、鎖骨のすぐ下の「中府」、背中の「肺兪」、腕の「孔最」などを治療します。

・食欲不振、便秘、下痢などがあるとき

食欲不振、便秘、下痢といった消化器の症状に対しては、胃の働きをコントロールする「中脘」を中心に治療をします。腹部では「巨闕」、「天枢」、「大巨」、「肓兪」、背中では「脾兪」、「胃兪」、「大腸兪」、「小腸兪」、足の「足三里」、「地機」などが基本のツボです。

吐き気がある場合は「天突」も処置します。また、ストレスに有効なツボとして、腰の「腎兪」の刺激を忘れてはいけません。

これらのツボに対する刺激は、マッサージ・指圧、鍼や灸による刺激が実に効果を示します。指圧は指鍼法を取り入れるといいでしょう。そのときは、あまり力を入れ過ぎずに、多少痛いけど気持ちがいい、という状態を目安にします。灸は各ツボに。3~5壮すえます。

〇腹式呼吸でリラックスする

腹式呼吸は、横隔膜が動くことで体内にたまった炭酸ガスを楽に吐き出し、また、酸素を多く取り入れることができます。これをゆっくりと行なっていると気持ちがリラックスして、体が楽になります。

毎朝目覚めたときに、あおむけで手足を伸ばし、口を結んで、鼻からゆっくりと息を吸います。腹が膨らんだら、おちょぼ口でゆっくりと息を吐き出します。1回の呼吸い3~5秒かけます。