脚気

若い男子を中心に、足のむくみを伴う多発性神経炎の症例報告がありました。患者に共通する症状は、足がしびれたり、ピリピリ痛んだり、足がだるくなるというものでした。

初めはウィルス感染による新しい病気ではないかと考えられましたが、色々な報告よりそれらが全て脚気によるものであることが分かってきました。

脚気といえば、以前は国民病として恐れられていましたが、原因がビタミンB1欠乏であると分かってから、今日の日本ではもう起こらない病気だと思われてきました。

現代のような豊富な食糧事情でなぜ脚気が発生するのかは、偏った食生活が大きな要因といわれています。甘味飲料水や糖質の豊富な食べ物を飲食することで、糖質を体内で利用するためのビタミンB1がどんどん消費されるために、B1欠乏症となって代謝異常が起こるのであります。そして、足がしびれたり、ピリピリ痛んだり、足がだるくなるといった症状が出現します。

脚気は動悸や息切れなど循環器系の症状も伴い、また、ふくらはぎをつかむと圧痛があるという特徴があります。

脚気は食生活の乱れを正すことが基本になりますが、鍼灸治療は脚気に伴う諸症状を取り除くことが目的になります。

―鍼灸治療編

◆主要なツボ

頭頚部 「天柱」、「風池
背中  「心兪」、「膈兪」、「筋縮
腰部  「三焦兪」、「腎兪
胸部  「膻中
腹部  「中脘」、「大巨」、「関元」、「水分
手   「曲池」、「合谷
足   「足三里」、「地機

などがポイントになります。

◆治療法

「天柱」、「風池」、続いては「心兪」、「膈兪」、「肝兪」、「三焦兪」、「腎兪」などの施術を行います。これらのツボは、だるさ、疲れを取り除き、筋力の増強を図るものであります。そして、「筋縮」は、ビタミンB1欠乏による代謝異常での、筋肉のこわばりやしびれたときに効果を発揮します。左右の「肝兪」の間にあり、「肝は筋をつかさどる」という中国の古典の記述通り、筋の働きを改善する便利なツボです。また、足のむくみをとるのに、「中髎」、「膀胱兪」などのツボを活用します。

体の前面部の、「膻中」、「巨闕」、「不容」、「期門」、「中脘」、「大巨」、「関元」などを処置をしていますと脚気の諸症状解消に役立ちます。また、むくみが目立つようでしたら、「水分」や「水道」などを処置します。とりわけ、「水分」は刺激をしますと体内に余分な水毒がたまらず、水はけがよくなり、むくみ除去には欠かせないツボであります。

手のしびれや痛みをとるために「曲池」や「合谷」を活用します。体のだるさをとる「手三里」、足のむくみには「地機」や「三陰交」を施術します。

犢鼻」や「解谿」などは足の痛みやしびれを軽減するために効果のあるツボです。

上記のツボを、症状に合わせて選択し治療を行います。

脚気の手がかりは「膝蓋腱反射テスト」を行います。患者さんに高い椅子に座ってもらい足をブラブラさせて、ひざの下2~3センチのところを金づちや手刀でポンと叩きますと、正常な場合、反射的に足が前に勢いよく上がります。脚気の場合、足の上がりが弱かったり、上がらなかったりします。

〇ビタミンB1を多く含む食材

脚気にはビタミンB1の摂取が大事になります。ビタミンB1は、熱を加えるとより摂取しやすくなるといいます。B1が豊富な食材を、汁ものなどに取り入れてもよいかもしれません。

豚肉、大豆、ウナギの蒲焼き、穀物の胚芽を豊富に含むもの(玄米や全粒粉など)、かれい、栗など。