野球ひじ

野球ひじとは、ひじの内側にある円回内筋という筋肉の炎症で、専門的には内側上顆炎と呼ばれていますが、野球をしたときに起こりやすいのでこのように呼ばれます。

ひじの外側の出っ張ったところに回外筋、内側の出っ張ったところには円回内筋が、それぞれ腱となってくっついています。そして、ひじが脇に固定されているとき、前腕を外側にねじる場合には回外筋が使われて、内側にねじるときには円回内筋が使われます。したがって、前腕を内側へねじる動作を何度も繰り返して行うときに、野球ひじは起こりやすくなります。

ところが、肩やひじの角度を90度位に曲げていますと、前腕を外側にねじるときも円回内筋が使われます。さらにその状況からひじを深く曲げ、前腕を内にねじるときも円回内筋が使われます。

このように、円回内筋は前腕をねじる動作のときには非常に使われる筋肉なので、前腕のねじる動作を伴うスポーツでは何でも起こります。野球のポジションの中ではピッチャーが、特にカーブなどの変化球を投げると円回内筋の炎症は起こしやすくなります。

-鍼灸治療編

◆主要なツボ

痛みは、円回内筋の筋腱移行部に出る場合が多いです。ちょうどそこには、手の太陽小腸経の「小海」と手の少陰心経の「少海」が、上腕骨内側上顆を外側と内側からはさみ込むようにしてあります。しかも、痛みの出る部位もこの二つのツボに一致することが多いので、ここを中心に治療します。手の厥陰心包経の「曲沢」を使うこともあります。

◆治療法

野球ひじで気をつけなければならないのは、子供の場合は鍼灸治療の対象にしないということであります。少年野球が盛んになるにつれて、子供のピッチャーでもカーブなどの変化球を投げることが多くなり、それが原因で野球ひじになることがあります。

ところが、子供の骨は成長過程にあるので、その骨にくっついている腱に障害が起こると、骨の成長が妨げられることがあります。すると、骨が十分に伸びなくなり、悪いほうの腕は正常な腕の骨に比べて短くなるといった事態にもなりかねません。悪い部分の血管や神経が圧迫が圧迫を受け、そこから先の筋肉がやせてくる恐れも出てきます。子供の野球ひじは必ず専門医の整形外科の治療を受けることであります。

大人でも、骨に異常が出ている場合は整形外科の治療が必要になるので、レントゲンで骨の異常がないことを確かめてから鍼灸治療を行うことをお勧めします。

痛みをとると同時に、円回内筋の緊張をとるためにはパルス通電がよいですが、この筋肉上にはちょうどいいツボはありません。そこでツボにこだわらずにパルスをかけます。

円回内筋は前腕の二つの骨、橈骨と尺骨のちょうど間にある筋肉なので、その二つの骨の間で、ひじの内側のしわから指幅3本分くらいの手首に寄ったあたりの中央と、「少海」か「小海」のうち、痛みをあるほうを選びます。

また、円回内筋の緊張をとるために、ひじの内側にある心包経の「曲沢」に、置鍼か単刺術を行ってもいいでしょう。

◆メモ

野球ひじ以外のどのスポーツ障害にもいえることですが、鍼なら鍼治療だけをしばらく続けますと、その刺激に慣れが生じて、効果が落ちることがあります。そのようなときには、部分的に灸や指圧など、他の刺激に変えるといいでしょう。その場合も、使用するツボは同じです。また、ひじだけではなく首や肩の治療もぜひ行いましょう。

〇野球ひじの家庭での養生

ひじや腕を冷やさないようにしなければいけませんが、冬よりも腕がむき出しになる夏のほうが冷えやすくなります。冷房の効いた部屋で長袖を羽織るとか、事務仕事の人はちょうどひじ関節の内側が、机などの冷たい面が触れることがあるので、腕に何かを巻きましょう。

腕に巻くものとしては、運動中ならサポータでもいいですが、普段はサポーターは圧迫が強くて血流の循環を妨げます。柔らかい毛糸のようなものが望ましいです。