顔の麻痺

夏の暑い日、うっかり扇風機をかけっぱなしでうたた寝をしていまい、目が覚めてみたら、顔が強ばって笑うことができない、ということがよく起こります。

これは、顔が長時間冷やされたり、心身の疲労が続いたりしたときに、顔の表情筋にめぐっている顔面神経の機能が鈍って起こる症状で、顔面神経麻痺といいます。東洋医学ではこの症状を「口眼過斜」といっています。

顔半分に起こった軽い麻痺なら2週間くらいたつと自然に治りますが。人目にさらすことが一番多い顔のことなので、患者にとって一刻も早くこんな症状をとりたいと思うのは人情であります。

東洋医学のツボ療法は、このような患者の苦悩をとり除くのに効果的であります。とりわけ、一過性に片側の顔面の表情が消失する突発性顔面神経麻痺は、ツボ療法が最も功を奏します。

顔面神経麻痺の原因が、脳出血や髄膜炎などの中枢性疾患や中毒などであれば、専門医の治療に一任することが望ましいです。特に、顔全体が、左右両方ともに能面のようになってしまったという場合には、脳の中枢の病気であるので、専門医の守備範囲になります。

しかし、実際に多いのは感冒や寒冷によって起こる突発性顔面神経麻痺で、このような場合は、ツボ療法では麻痺した神経の興奮を高め、筋肉の栄養をよくし、血行を盛んにするような治療を行います。

-鍼灸治療編

◆主要なツボ

前頭部 「神庭」、「頭維
顔   「攅竹」、「糸竹空」、「睛明」、「瞳子髎」、「四白」、「下関」、「大迎」、「地倉
耳   「聴宮」、「翳風

などを用います。

◆治療法

それほど重症でないときは、まず顔を蒸しタオルなどで5分くらい温湿布をして、ホカホカと温かくなったら、蒸しタオルをとり、顔の筋肉に沿って鍼やマッサージ、指圧をします。

前頭筋をねらい、「神庭」、「頭維」を、眉の「糸竹空」、「攅竹」を刺激します。

次に眼輪筋や頬筋、笑筋、口輪筋を対象に、「四白」、「頬車」、「地倉」、「大迎」を処置します。

特に大切なのは、顔の表情筋の運動であります。一通り施術が終えたら、患者に笑う、目を閉じる、額にしわをつくる、頬をふくらます、口を八の字に結ぶ、下あごを下げるなどの百面相を行ってもらい、表情筋の運動訓練をさせます。これは自宅でも朝晩1回5分から10分くらい根気よく続けるように指導することがポイントです。

また、顔面神経麻痺で目が開きっぱなしなると、ほこりが入ったり、感染が起こりやすくなったりするために、白目が赤くなり、目がくしゃくしゃ下り、目の後ろから後頭にかけて痛んだりすることがあります。このような場合は、「瞳子髎」、「睛明」、「陽白」を刺激します。自宅でも、洗眼するように指導することはむろんであります。

歯と頬の間につまるようなときには、とくに頬の筋肉の刺激を丁寧に行い、「四白」、「聴宮」、「下関」、「地倉」などを刺激します。

◆メモ

顔面神経麻痺には、低周波療法も効果があります。生体に通電する方法で、低周波通電を行いますと、筋、神経を刺激し、麻痺を起こしている筋肉を収縮させたり、血流を増加させたりして、顔面神経麻痺をとり除くことができます。