肉離れ

専門的には「筋断裂」といいますが、一般に軽いものを肉離れと呼んでいます。肉離れは、何かで打たれたり、ぶつかったりして打撲と同時に起こることがありますが、ここでは、自らの動きで起こる場合だけを対象にします。

スポーツ障害のほとんどがそうであるように、肉離れも疲労と準備運動不足が原因で、筋線維が横に走っている場合は縦に(例えば大胸筋)、縦に走っている場合は(例えば腓腹筋)横に切れます。ひどい場合は、触ると断裂を起こしたところがへこみを確認できます。

筋肉は、充分に伸び縮みできるように弾力のある組織になっていますが、関節に近い部分は腱という伸び縮みしにくい硬い組織になっています。疲労が重なったり、準備運動不足であったりしますと、筋肉はスムースに動かずに無理が生じ、筋の引っ張る力に県が耐えきれなくなります。この時に筋と腱の移行部が切れてしまうのが肉離れであります。ときには、筋肉の中ほどで起こるときがありますが、ほとんどがこの筋肉移行部に起こります。

また、肉離れは骨格筋のあるところなら体のどの部分でも起こりうるが、特にハムストリングス(太ももの裏の筋肉)や大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉)、下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)に起こることが多いです。太ももの筋肉であれば、股関節に近い部分とひざの関節に近い部分で起こりやすいです。

-鍼灸治療編

◆主要なツボ

・肉離れが前面で起こった場合‥胃経のツボ
・肉離れが内側で起こった場合‥脾経のツボ
・肉離れが後面で起こった場合‥膀胱経のツボ
・肉離れの周囲にツボがない場合‥痛むところ

◆治療法

筋線維が切れているので、多かれ少なかれ内出血しているはずです。受傷直後でしたら、血液や組織液がそれ以上でないように、包帯などで巻いて圧迫し、その上から氷のうのようなもので冷やします。ただし、冷やしすぎるのは、出てきた血液や組織液の吸収が悪くなるので、約30分冷やしたら冷やしているものをとって、患部が他のところと同じ温度に戻るまで待ちます。そして、再び冷やすという間欠冷却法をとり、症状によっては半日から1日くらい続けます。冷やしすぎることなく、期間が1日以上に及ばないように注意して、その後、鍼灸治療など含めた温熱療法に切り替えます。

スポーツ障害の場合は、肉離れに限らず、いずれも筋深部まで刺激をするほうが回復が早いので、鍼を中心とした治療を行います。とりわけ、鍼通電は、筋にリズミカルな収縮を起こすので効果は高くなります。通電時間は約10分、長くても20分で、患部を圧迫して痛みがなくなるまで通電します。その後、筋のしこりをほぐす目的で、鍼を刺し置く置鍼術か、単鍼術を行います。

受傷初期には、指圧やマッサージでも悪くないですが、患部を強く圧迫することはよくないので、鍼治療中心に考えます。

◆メモ

肉離れは、軽度のものであれば1週間ほど鍼灸治療を行えば治ります。しかし、日頃から運動をしている人は鍼に対する反応がよくて治りやすいですが、普段運動をせずに、突然運動をして肉離れが起こった人などは治りも遅くなります。

肉離れは一度起こすと、再発を繰り返すことがありますが、これは初めの治療が十分に行わなかったからで、再発を何度も繰り返しますと、弾力のあった筋が結合組織に変わり、硬く変化します。こうなりますと、筋の間に腱ができてしまったような状態になり、従来通りの運動ができなきくなります。

そのためには、最初の肉離れのときに完全に治すことが大事で、圧迫痛がなくなるまでしっかりと鍼灸治療を行うことが望ましいです。

慎重すぎるほどの休養が大事で、症状の軽い場合でも2~3週間は運動を控えます。また、家庭でも患部を冷やさないように注意を払うことが必要になります。