糖尿病

糖尿病は、すい臓から分泌されるインシュリンが不足しておこる病気です。インシュリンは、摂取した糖質、タンパク質、脂質などの体内での代謝をスムーズに行なうために不可欠で、これなしには生命活動が維持できないともいわれています。

症状は人によってかなり異なり、また、病気の程度が軽い場合にはこれといった症状もあらわれません。症状には代謝異常に起こる症状と、合併症が起こって出てきた症状があります。

糖尿病の自覚症状の中で最も多いのは、口が乾いて、必然的に水分を多くとるので、頻尿、多尿になることです。また、空腹感と多食、とくに甘いものを欲しがります。

症状が進むと、病気に対する抵抗力が落ちて、感冒にかかりやすくなったり、血管障害が起こりやすくなったりします。他に、急に視力が落ちる、手足がしびれる、おできができやすくなる、皮膚にかゆみが出る、歯槽膿漏になる、貧血になるなどの合併症を起こします。

原因は、インシュリンを分泌するすい臓に異常があるとき、遺伝的素質のある人に何かの因子(肥満・ストレス・感染など)が加わると、それが誘因となって発病しやすいといわれています。

糖尿病は、生活や治療次第で良くも悪くもなる病気の典型であります。治療の基本は食事療法で、飲食に注意して体重をコントロールし、また、ストレスがたまらないように留意すれば、十分に予防できます。

東洋医学のツボ療法では、初期の段階であれば、全身の血行をよくして回復につなげられますし、糖尿病によって起こる合併症を軽くして、側面から治療をしていくこともできます。

-鍼灸治療編

◆主要なツボ

背部 「肺兪」、「脾兪」、「腎兪
腹部 「天枢」、「肓兪」、「大巨
手  「内関」、「手三里
足  「足三里」、「三陰交」、「地機

などがよく使われます。

◆治療法

脾の臓のツボである「脾兪」を主に、背中の「肝兪」、「胆兪」、「脾兪」、「胃兪」を刺激します。「脾兪」は、その名の通り脾の臓の働きに関係するツボですが、この脾は現代の解剖学的分類によりますと、まさにすい臓そのものに相当していますので、「脾兪」はおのずとすい臓の機能を整えてくれるわけであります。加えて、動悸や息切れ、手足の冷えをとるために「肺兪」、「厥陰兪」、活力をつけるために「腎兪」も刺激します。

腹部では、「中脘」、「天枢」、「大巨」、「肓兪」などを刺激します。これらのツボはお通じをよくして、胃腸の機能を整える働きがあります。

足は「足三里」、「三陰交」、「地機」などが効果を示します。これらのツボは灸治療が効果的です。「足三里」は、とりわけ糖尿病特有の、足のだるさや疲労感をとるのに有効です。運動不足の人には、家庭療法の一環として毎日「足三里」を押してみるだけでも、疲労、倦怠感がとれて元気になり、糖尿予防にも役に立ちます。「三陰交」と「地機」は、脾の臓と関係のあるツボとして昔からよく使われています。

手では、胸から腹にかけての症状を和らげるために、「内関」、「手三里」などを刺激します。

灸治療の場合は、上記のツボの中から症状別に選んで治療をしますが、基本的には「厥陰兪」、「脾兪」、「中脘」、「大巨」、「足三里」、「三陰交」、「地機」などに3~5壮すえます。3週間にわたって1日1回ずつ行ったら、1週間休み、そしてまた3週間行います。

頻尿、多尿の場合は、「腎兪」、「膀胱兪」、「水分」、「水道」などの灸治療が効果的であります。

◆メモ

インシュリン注射が必要な重症なものを除けば、鍼灸治療が糖尿病の症状軽減の効果を上げることも少なくはないです。ただし、糖尿病の人は化膿しやすい傾向があるので、灸をすえるときは、必ず米粒大より小さな灸にします。また、くびや後頭部などの毛髪のあるところは禁灸です。