耳の痛み

耳が痛むという場合、その大部分が中耳、外耳の炎症を起こしています。特に、夜になると痛みが激しくなって眠れないというときには、急性中耳炎にかかっている場合が多いです。この病気は、耳の鼓膜から内耳までの間の炎症で、急性のものと慢性のものとがあります。

急性中耳炎の多くは、鼻やのどの上気道の感染が、耳管を通って内耳に侵入することで起こります。大人もかかりますが、耳管が太くて短い幼児が特にかかりやすいです。

この急性中耳炎を治療しないでそのままにしていたり、軽い急性中耳炎を何回も繰り返したりすると、慢性中耳炎になる場合があります。中耳炎は、細菌やウィルスの毒力が強かったり、体の免疫力が弱っていたり、のどや鼻の持病があったりすると発病しやすいので、初期の治療が大切となります。

初期の症状は、軽い痛みはそれほどでもないですが、だんだんと痛みが激しくなり、物を噛んでも痛みを感じるようになるときは、外耳炎の可能性が考えられます。この症状になると、運動や入浴などは避けて安静にする必要があります。

これらの他に、原因が何も思い当たらないのに、物を噛んで耳の周りが痛むという場合があります。これは神経性耳痛といい、別に心配する程の事ではありませんが、やはり当人は不快なものであります。このような神経性耳痛には、ツボ療法が効果があります。

-鍼灸治療編

◆主要なツボ

耳の周りを押すと、痛みを感じる部分があります。耳の痛みの治療では、そこがポイントとなるツボです。ツボ名としては、「角孫」、「頭竅陰」、「風池」、「翳風」、「頬車」、「耳門」などです。

また、腹部の「肓兪」、腰の「腎兪」、内くるぶしの「復溜」なども耳の痛みをとるツボとして有名です。

◆治療法

神経性の耳痛の治療は、「角孫」、「頭竅陰」、「風池」、「翳風」、「頬車」、「耳門」などを対象に刺激します。

腹部の治療は「肓兪」を用います。「肓兪」は心身の変調を整えるツボです。腰では「腎兪」が心身を整え、活力をつけるツボで、いずれも神経性耳痛の治療には欠かせません。

内くるぶしの上の後ろにある「復溜」は、頭痛や耳、歯の痛みをとるツボとしてよく知られ、このツボに「太谿」を加えて刺激します。

中耳炎による耳の痛みには、「耳門」、「翳風」、「完骨」、「合谷」がポイントとなるツボです。頭部の各ツボへ刺激を行い、最後に「合谷」を刺激します。「合谷」は、鍼治療の場合、響きを与えると効果が上がります。

中耳炎が慢性化しているものは、薬物療法と併用してツボ療法を行うと、より効果を高めることが出来ます。ただし、慢性中耳炎は急性増悪というケースがあるので、ツボ療法を続けながら時期を決めて。時々専門医に治療の経過を診てもらうことが必要であります。

慢性中耳炎のツボは、「聴宮」、「角孫」、「頭竅陰」、「翳風」、「天柱」、「完骨」、そして側頭部の「天窓」などを刺激します。

外耳道が化膿して、ズキズキ痛みが走るとき最も重要になるツボは「翳風」です。このツボと、耳穴のすぐ前にある「耳門」、乳様突起の後ろ上方のくぼみにあたる「完骨」などを刺激します。さらに、腕の「曲池」、「手三里」、「養老」、「合谷」を刺激します。

◆メモ

耳が化膿したものには、「曲池」、「手三里」、「養老」などに灸を数十壮すえると、排膿しやすくなります。ツボの数はなるべく少なくします。耳痛には「曲池」、「腎兪」に灸をすえると痛みが薄らぎます。

慢性症状では、特に耳殻の後ろの手で押さえて痛むところに阿是的に5カ所ほど灸をすえるとよいでしょう。知熱灸でも効果はあります。