のぼせ

のぼせというのは、首から上、特に顔や頭に発熱とは違う熱感があって、ほてる状態をいいます。

精神的な興奮が原因となる場合が一番多く、大勢の人の前に出たり、恥ずかしい思いをしたりするときなどに経験をします。

体の変調で起こるのぼせは、自律神経の働きがうまくいかないときであります。この場合には、発作的にのぼせが起こり、手足や腰など部分的に冷えてくることがあります。この場合、しばしば動悸、めまい、頭痛、肩こり、耳鳴り、イライラ、発汗、疲労感など伴います。

動脈硬化症や本態性高血圧症、頭の外傷などが原因となることもあります。女性は、生理前にもほてることがあります。また、更年期の自律神経失調の一つの症状として、同様の現象が起こります。

東洋医学では、のぼせのことを「上熱下寒」といっています。つまり、のぼせは上半身がほてって熱っぽく、下半身が冷えているという状態であります。熱っぽさや冷えは、体表面、特に皮下の血液の状態にあらわれます。すなわち、皮膚の下を流れる血液の量が多くなればほてりを感じ、少なければ冷えを感じる訳であります。

では、どのようなとき血液量が増減するのかいいますと、血管をめぐる自律神経のアンバランスが起こると、上半身の血管が拡張するために血液量が増え、逆に下半身の血管が収縮するために血液量が減ってくるのであります。

つまり、大部分ののぼせは、上半身と下半身の自律神経の緊張状態に相違が起こったために、普段ならまんべんなく体全体をめぐっているはずの血液が上半身に多量に集まり、下半身には行かなくなっているのであります。

したがって、のぼせの治療は上半身の血液を下半身に誘導し、血液の配分を整えることにポイントをおきます。

-鍼灸治療編

◆主要なツボ

頭  「百会
首  「風池」、「天柱
背部 「肩井」、「心兪」、「腎兪
胸部 「膻中
腹部 「中脘」、「肓兪」、「天枢」、「関元
手  「合谷
足  「足三里」、「照海」、「湧泉

などが中心になる。

◆治療法

のぼせの治療は、頭(天部)と足(地部)にツボをとり、へその高さ(天地の境)で整えるというのが基本であります。つまり、へその高さで体を上下に分け、上半身は天の部、下半身は地の部と考えます。

この概念では、頭頂部の「百会」と足底の「湧泉」は非常に重要なツボとなります。ただし、治療は先に「百会」を処置した後、背中に入ります。うつぶせで、「風池」、「天柱」、「肩井」、「心兪」、「腎兪」を施術します。「風池」、「肩井」は頭ののぼせをとり、「心兪」は血液の循環をよくし、「腎兪」は体力をつける働きがあります。

以上のツボに加えて「三焦兪」も刺激をします。上記のように、のぼせは上熱下寒の証といわれて、全身の血液循環がうまく調整されていない状態をいいますが、「三焦兪」は、天の部、地の部をめぐる血液の流れをコントロールする働きがあります。

さらに、「志室」、「中髎」、「膀胱兪」を加えますと、いっそう効果的です。そして、下半身の末端の「湧泉」を刺激しましたら、前面の治療に移行します。

まず、「人迎」、「気舎」を刺激し、血液循環をコントロールをします。続いて、「膻中」、「中脘」、「肓兪」、「天枢」、「関元」、「大巨」、「中極」を刺激します。ちょうどへその高さにある「肓兪」、「天枢」は、天の部と地の部を分けるツボどころになります。

最後に、手では「合谷」、足では「足三里」、「照海」に加えて、「崑崙」、「築賓」、「三陰交」、「太谿」を、手足の血液循環を調整するために刺激します。