胃潰瘍

中年のサラリーマンの持病のトップに挙げられる病名に、胃潰瘍があるかと思います。十二指腸潰瘍とあわせて精神的ストレスとの関係がきわめて強く、したがって治療の方法も共通する点が多いことも認められるようになりました。胃潰瘍と十二指腸潰瘍は、あわせて、消化性潰瘍と呼ばれます。

自覚症状の中で最も多いのは腹痛で、痛みはみぞおちあたりの範囲で、焼けるような、差し込むような、シクシクする、石をお腹にのせられているような痛みで、食事をするとおさまり、空腹になるとまた痛み始めます。

痛みとともによくみられる症状は、胸やけです。空腹時に甘いものを食べたり、脂っこいもの食べたりしたあとに訴えることが多いようであります。げっぷが出る場合は、知らぬ間に飲みこまれた胃内の空気が外に出たに過ぎませんが、すっぱいげっぷが出るときは胸やけがあると考えてよいでしょう。

また、吐血も下血も胃潰瘍に多く見られます。吐血はおう吐ともに出て、こげ茶ないしは黒褐色で、食べ物の残りを含んでいます。下血とは、血液を含む黒いタール様の便の排出することで、胃液の中に含まれている塩酸の働きで、血液が黒っぽくなると考えられます。したがって、黒っぽい吐血、下血のあるときは、塩酸の存在する胃や十二指腸付近の病気を考えるのが常識となっています。

しかし、潰瘍があっても必ず上記のような症状があると限らず、知らない間に潰瘍になっていることも少なくありません。

元来、東洋医学療法は内臓そのものにある病的変化よりも、患者の自覚症状や他覚症状を中心に、患者の体力や体調を変化させて、回復させる力や病気への抵抗力を強めることを目指しています。

胃潰瘍の場合も、胃潰瘍を直接治すツボがあるのではなく、潰瘍に伴う症状を正しく判断して、それらを除去して、さらに体力の増強を図る治療を行います。

-鍼灸治療編

◆主要なツボ

背部 「膈兪」、「肝兪」、「脾兪」、「腎兪
腹部 「不容」、「期門」、「中脘」、「肓兪
足  「足三里」、「陽陵泉」、「梁丘
手  「内関」、「合谷

などがポイントになります。

◆治療法

うつぶせで、背中の「膈兪」、「肝兪」、「脾兪」を刺激します。これらのツボなどで、背中中央部のコリと重苦しさをとり、潰瘍によって起こる腹部症状を抑えます。

胃潰瘍の原因は、胃液などの攻撃因子と胃粘膜の防御の力関係がくずれることによって起こると考えられますが、特に「膈兪」というツボは胃液の分泌を抑える作用があるとされています。

また、胃潰瘍の大敵であるストレスを除き、体力の増強を図るために、「腎兪」も治療するといいでしょう。

次にあおむけで、お腹の治療をします。ここでは「不容」、「期門」、「中脘」などを治療します。さらに、腹筋の緊張をやわらげて、腸の機能を整えるために「大巨」と、体力増強を目的のために「肓兪」を処置します。

さらに、腕の「内関」と手の「合谷」、足の「足三里」、「三陰交」を刺激して、胃腸の調子を整えます。足の外側、ひざの少し下にある「陽陵泉」も胃潰瘍には欠かせないツボです。このツボへの刺激は、胃潰瘍特有の痛みを鎮めるばかりではなく、胃液の出しすぎを抑える働きもします。あわせて、空腹時の痛みを取り除く「梁丘」、「衝陽」も刺激します。

治療法はマッサージや指圧でも効果がありますが、鍼灸治療が最も効き目があります。マッサージや指圧の場合は、腹部への治療は避けてください。