小児虚弱体質

虚弱体質とは、体質が生理的に不安定で、刺激に対して、普通の子供より過敏に反応しやすいものをいいます。いわゆるひ弱な子供のことで、腺病質などとも呼ばれることがあります。また、年齢層によって、乳児期なら滲出性体質、乳幼児ならリンパ性体質などといわれることもあります。

一般に言って、虚弱体質の子供は大きく二つのタイプに分けることができます。

一つは、やせ型のタイプで、血色が悪く、食欲もなく、すぐに疲れて、根が続かない、皮膚や粘膜が弱くて、わずかな刺激にもすぐ反応して、かぶれや炎症を起こしやすいといった傾向があります。

したがって風邪をひきやすく、また治りにくく、そのために気管支の粘膜が炎症を起こし、滲出液が詰まって、喘息様の症状が起こります。

腸の粘膜も過敏に反応しやすく、しばしば下痢になります。多くは、偏食で、神経質な子供であります。

もう一つは、一見太って見えますが虚弱な子供であります。これは水太りの見かけだけの肥満児で、皮膚をつまんでみると弾力がなく、筋肉の発達も悪いです。このタイプも、やはりいろいろな刺激に対して皮膚や粘膜が過敏に反応しやすく、やせ型タイプと同じような症状が起こしやすくなります。

このような体質は、親から受け継いだと考えられますが、他の要因も当然含まれているはずであります。例えば、自律神経系の不安定さが関係していることもありますし、親の育て方の問題もあります。また、早産児、未熟児であることも関係があるようです。

こうした虚弱児に対する治療になると、現代医学ではなかなか決め手のある治療法はないようです。こういった虚弱児の体質改善は、ツボ刺激はなかなか効果があるものです。

-鍼灸治療編

◆主要なツボ

背部 「大椎」、「身柱」、「膈兪」、「脾兪」、「腎兪」、「命門
腹部 「中脘」、「水分」、「肓兪」、「天枢
手  「孔最
足  「足三里

などにツボが活用されます。

◆治療法

虚弱体質を改善するには、鍼灸治療を長期的に行うと効果があります。少なくとも2カ月以上引き続き行えば、食欲が増し、抵抗力も付きます。これは自家中毒症にも有効です。

虚弱な子供の背中の「大椎」には、圧痛、叩打痛が出ます。また、「身柱」は昔から子供の虚弱な体質を改善するツボだといわれています。治療はまずこの二つのツボから始めます。

また、「肝兪」、「脾兪」、「腎兪」も虚弱体質を治すのに重要です。鍼灸の古典には、左の「肝兪」に右の「腎兪」は男の子、右の「肝兪」に左の「腎兪」は女の子の保健強壮の組み合わせとして尊ばれ、ここに灸をすることを「すじかいの灸」と呼んでいます。

風邪をひきやすければ「風門」、胃腸が弱く食欲不振ならば「膈兪」を加えます。

腹部では「中脘」、「水分」、「天枢」が胃腸の機能を整え、「肓兪」が活力をつけるツボになります。

また、「足三里」は子供が丈夫に育つツボとして有名であります。10才前後の子供は手の「孔最」を加えます。

これらのツボは、小児鍼を用いて、鍼で刺さないで、軽くツボをさする程度の刺激だけで効果があります。灸の場合は、10歳未満の子供には、木綿糸大のできるだけ細く小さい灸をすえます。知熱灸や温灸を用いてもよいでしょう。

温灸の場合は、「神闕」に治療を施すと元気が出ます。いわゆる、「へそ灸」であります。その場合は、へその上にガーゼを当て、その上からへその穴がうずまるように塩を置き、その上にもぐさをのせて火をつけます。和紙なら3㎝四方に切り、塩水にぬらしてから、へその上にのせます。

また、ニンニク灸やショウガ灸で治療を行ってもよいでしょう。いずれの場合も、もぐさが全部燃えてしまうまで置いておくと、熱すぎることがあるので、そのときは途中でニンニクなり、ショウガなり、ガーゼ、和紙をへそから外します。

◆自家中毒症の場合…

周期的に嘔吐する、いわゆる自家中毒症の場合は、「百会」、「身柱」、「中脘」、「合谷」に刺激を与えます。とくに、「中脘」は、手のひらで軽く圧を加える方法をします。