夜泣き・かんのむし

夜泣きは神経過敏の幼児に起こりやすく、一種の小児神経症で、普通は自然で治りますが、長く続くこともあります。

俗に、「かんのむし」といわれているものは、子供の心が不安定で、神経質になっている状態であります。夜泣きもその一つにあげられ、乳幼児のこのような状態を、親はどうしても気にして、過保護になりがちですが、子供の心の安定には、親の心の安定が欠かせません。

昔から虫切り、虫封じなどというおまじないがありまして、ときには手のひらから白い虫をとってみせるということもしますが、こうしたことで親の精神状態が安定したために、子供の神経質が治るということもあります。要するに、親が神経質にならず、のんびりしたムードで子供を育てることが大切であります。

そのためには、子供に恐怖心を起こさせるような話や無理なしつけはやめた方がいいでしょう。それが潜在意識となって、夜泣きを起こすことがあります。物心ついた子は、テレビや映画で見た恐ろしい場面が、夢の中で再現され、おびえて泣き出すこともあります。

尚、夜泣きはすっかり目が覚めれば何ともないはずですから、何か病気があって泣き出す場合と区別しなければいけません。病気の場合とは、消化器障害、寄生虫、慢性鼻炎、扁桃肥大などがあげられます。また、便秘、膀胱の充満も夜泣きの誘因となることもあります。

子供の夜中の症状で、「夜驚症」というものがあります。これは夜中に急に起き上がり、泣き出したり、ふらふらと部屋の中を歩き回るもので、翌朝子供に聞いてみても、夜中の出来事を覚えていないのが特徴です。夜驚症も俗にかんのむしといわれます。これも一種の小児神経症であります。

夜泣きをする子供は、癇(かん)が強いもので、昔から子供の神経過敏症を癇証といいまして、関西地方ではこの鍼灸治療が大変盛んであります。実際かんの虫には効果を示します。

-鍼灸治療編

◆主要なツボ

背部 「身柱」、「肝兪」、「命門
胸部 「鳩尾
腹部 「天枢」、「関元
指  「二間

などが決め手となるツボです。

◆治療法

鍼の刺激では、小児はりを用いて刺激をしますと効果は高まります。乳幼児の皮膚は非常に敏感なので、小児はりでツボを中心にその付近を刺激しますと、大人の皮膚を鍼で刺激したのと同様の効果があります。ツボは上記のツボから選びます。

夜泣きには、灸治療も非常に有効であります。昔から夜泣きには有名な散気の灸というのがあります。〝気〟は邪気の気であり、子供にたまった悪い病気のもとを散らすというわけであります。使うツボは「身柱」です。

「身柱」というツボは身体の柱にあたる場所という意味で、昔から子供の万病に効くといわれています。「身柱」は第3胸椎の棘突起の下にありますが、子供の場合見分けにくいので、まずは後ろ首の生え際から指先で軽く皮膚をつまんで軽くもみます。そして、首の付け根から肩の下の方へもんでいきますと、体をピクッと動かすところがあります。その場所を指で軽く押すと、体をグッとよじらせるなどして反応を示せば、そこが「身柱」です。「身柱」に灸をすえることを「ちりげ(散り気)の灸」、または、「背中のちりけ(またはちりげ)」と呼びます。

「身柱」と人差し指の「二間」は、昔からかんの虫の特効灸点としてよく知られています。乳幼児の場合は、知熱灸か温灸がいいでしょう。

◆メモ

小児はりの原理を応用して、家庭でも利用できる方法があります。つまようじのとんがっていない方の端で、皮膚をツボ中心に軽くつっつきます。その場合、軽く、すばやく、さっと刺激するのがコツです。

ツボにマッサージや指圧を行う場合は、せいぜい500~1㎏の圧力で押すのが適当であります。