鍼灸オタクは早死にする 529

◆東洋医学講座 33

〇陰陽の法則

◆第五定式

「陰極まれば陽となり、陽極まれば陰となる」、これが第五定式で、第四定式をさらに発展させたものです。すなわち、陰遁、陽遁の過程には必ず一定の限界があって、ある限界点に達した後は、陰遁は陽遁に移行し、陽遁は陰遁に移行するということであります。

そして、この転換とともに統一体は、その存在様式、運動方向、運動形態、物理・化学的性質、組織形態や構造、働きなどを大きく変えることになります。その限界点がどこにあるかということや、存在様式の変化のあり方は、万物一つ一つみな異なっているのはいうまでもありません。この現象は、日常生活でいくらでも目に付く。

例えば、

●太陽と地球の相互位置関係の変化によって起こる夏冬の交代。一日として、同じ昼や夜はない。
●体温や血糖値の上下運動。一定程度以上、上昇すれば、下降に転じる。転じなければ、生から死へと変化する。
●需要と供給によって動く価格の上下変動。
●悪寒していた病人が、熱感に変わる場合。
●上方に投げたボールが、放物線を描いて上昇から下降に転じる運動。ボールの運動は、初めに投げたときの加速力と重力の相互の力関係の変化で定まる。
●100℃まで熱した水が突如水蒸気になったり、反対に0℃で固体の氷になったりする変化。
●石ころが、自らの凝固力を上回る外からの風化作用の結果、砂になる変化。
●卵の状態からひよこになる変化。同じように、さなぎが成虫になったり、種子が発芽して地上の木になったりする変化。
●それまでの政治社会が崩壊し、新しい社会となる場合。
●敵対国同士がついに戦争を起こし、そのあと友好国になる場合。
●好況の頂点で恐慌が起こり、不況へと転化する場合。
●地球の生成から人間の誕生までの進化の各段階。
●地殻のエネルギーが充満して、火山爆発したり、地震が起きたりする場合。
●動脈血が身体各組織で静脈血となり、また静脈血が肺で動脈血になる変化。
●物を売って貨幣にかえたり、反対に貨幣から物にかえたりする場合。
●年をとると、男は女っぽくなり、反対に女は男っぽくなること。

こうしてみると、転化とか転換とか変化とか発生、爆発とか言われる現象は、全てこの第五定式によることが分かります。この第五定式があるからこそ、万物はとどまったままで無に帰すことなく、存在様式を次々とかえて輪廻していくことになります。物理でいうエネルギー不変の法則も、これによるものであります。

なお、万物は多重層の陰陽から構成されているので、その運動も多層的に行われています。例えば、一日における昼夜の交代を通じて四季が変わり、この四季の繰り返しのうちに地球は進化し続けています。

人体も同様で、人体は無数に近い陰陽の組み合わせから成っているため、体内では無数の第五定式が絶えず行われており、これを通じて人は成長し、老衰し、死んでいくのであります。死ねばまた、存在様式を大きく変えることになります。

最後に第四定式と第五定式とを統一して示します。陰遁または陽遁の出発点を「生成」、増大過程を「発展」、限界点を「成熟」とすると、この成熟点で転換が起こり、それまでの過程は「衰退」と「消滅」へと向かうとともに、新しい陰遁または陽遁が「生成」することになります。すなわち、「成熟」は「消滅」の始まりであり、同時に、新しい過程の「生成」でもあります。

このようにして万物は上記のような過程を繰り返す運動体なのであります。また、この過程の中で、依存の度合も対立の度合も絶えず変化していくことになります。

以上のことは、三才論では「生・旺・墓」として、また五行論では「旺・相・死・囚・休」としてより詳しく論じられることになりますが、その基礎はすでに陰陽論の中で与えられているのであります。