鍼灸オタクは早死にする 538

免疫 17

〇NK細胞はがん細胞をやっつける

NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は、NK/T細胞系列の進化において最初に生まれたリンパ球です。形態学特徴により、大型顆粒球(LGL)とも呼ばれています。広い細胞質にアズール顆粒をもつのでこの名前があります。マクロファージから進化して間もないので、これと似た形態を示しています。

NK細胞は1975年の日本の仙道富士郎氏、アメリカのハーバーマン氏、スウェーデンのヴィグツェル氏によって同時に報告されました。健康な人の末梢血中に、がん細胞を殺す能力のあるリンパ球を見出されました。その後、NK細胞は、がん細胞だけではなく、ウィルス感染細胞も殺すことがわかりました。

驚いたことに、がん細胞に接着し、これを殺しているこのNK細胞はあらかじめ免疫していたから生まれたのではなく、健康成人の末梢血にある一定数が存在しているのです。T、B細胞が抗原で刺激されてはじめて働くのとは異なっています。

〇自分らしさを失った細胞をやっつける

NK細胞の細胞質内の顆粒には、パーフォリンやグランザイムというような細胞殺傷タンパク質が入っていて、これをがん細胞などにふりかけて殺します。その前にがん細胞との接着が必要ですが、NKR-P1、CD16、CD2などいろいろな接着分子の組み合わせで結合して、キラー活性をしています。

私たちの細胞のほとんどは、MHC(主要組織適合抗原)を発現し、自分らしさを表わしています。他人に臓器や細胞を移植すると、このMHCの構造の多少の違いによって拒絶されます。面白いことにNK細胞は、体の中の自分の細胞がMHCを失うとキラー活性を発揮することが知られています。自分らしさを失ったものを排除しようとするのです。

がん細胞でもMHCを持ったままがん化した場合はT細胞(キラーT細胞)が攻撃し、MHCを失ってがん化した場合はNK細胞が攻撃します。がん組織中に浸潤しているリンパ球を、がん浸潤リンパ球(TIL)と呼びますが、TILの内容は上記のようながん細胞の種類によって決まる傾向があります。