鍼灸オタクは早死にする 649

◆東洋医学講座 91

〇人体の生成機序と腎体

人体の生成の紀元は、父親の精子成熟と母親の卵子成熟に始まり、誕生の紀元は、母胎の卵管采(ラッパ管)の中で精子と卵子が結合することで始まります。

その人体原子とでもいうべき精子と卵子は、腎の精であり、言いかえれば腎精体なのであります。これは、父母の体から離別独立した腎精体であり、この独立した一滴の腎精体は、後天の脾化作用と大気作用によって成長したものであります。

我々一人一人の人体の元は、みな腎精体であって、天食、地食を吸収することによって膨張・生育化したものにすぎません。つまり、人体は腎体で、腎は人体の基本であり、生命源であります。とくに、胎児期は腎化活動が旺盛に行われ、心系・肝系・肺系・脾系などの組織がそれぞれ化成されます。

これからのことからもうかがえるように、腎の力はその人の生命源であり、また、心・肝・肺・脾の後天の働きをいかに運用し、また運用されているかが重要なポイントとなります。

先天力ー腎精力
後天力ー五臓力

腎精体は飽食性をもって脾化していくので、元は腎体でありますが、全体をみれば脾化体でもあります。

後天の脾化作用のなかには、腎をはじめとする心・肝・肺・脾の作用も含まれています。例えば、木気性の食物を受け入れやすい腎精は、木気肝旺体となり、火気性食品を吸収しやすい体質の人は火気心旺体、土気は脾旺体、金気は肺旺体、水気は腎旺体となります。

また、生まれてから老いるまでの過程は流年しているので、年代によって脾化性が異なります。つまり、先天的な肝旺体・脾旺体・肺旺体・腎旺体があり、さらに流年的な肝・心・脾・肺・腎の旺期があります。

流年的にみると、胎養・幼年時代は腎旺期で、小児・少年は肝旺期、青年・壮年は心旺期、中年時代は脾旺期、老年時代は肺旺期であります。例えば、少年時代では肝旺体の肝旺期であるので、全身が肝臓体で成っているのと同じく、神経過敏であって、木気の真情どおり伸びることが旺盛であります。

このように、われわれの人体は、先天・後天の五旺体で成っているとみることができます。