鍼灸オタクは早死にする 669

◆東洋医学講座 101

▽肝と眼

▼眼の異常について

『素問』の一節に「肝が眼を司っている」とあります。肝が根となり、眼という働きを外へ向かって発現している、つまり、肝の働きの一部が物を見る眼ということであります。肝の上葉はすなわち眼で
あるということであります。

そのほか、肝臓は心臓の母となって、子の力に相生じて、血液増減コントロールを行い、心の負担を軽くしています。それが、「肝が血を蔵す」ということであります。

『銀海精微』においても、「眼は五臓の華である」とあります。

実際の臨床面でも、肝と眼が相関性をもっていることがよく知られています。眼の変化は、すべて肝の変動によるものであります。

◎なぜ近視になるのか

近視には先天性のものと後天性のものがあり、実際ではかなり分けにくいものです。

先天的に肝が弱い上に後天的に目に負担をかければ近視になり、また、先天的に肝が丈夫であっても、後天的な負担が大きければ近視になります。だいたい近視は、先天的なものが多かったようです。仮性近視は、後天的なもので、先天的に眼の質落ちていて、肝の力も落ちているときにテレビなどを近くで見過ぎることでなりやすくなります。

ここで西洋的な考えと異なっているのは、近視でも他のどんな疾病でも、内因性と外因性の両方の原因があって病気になることです。内因性のもので体力が低下しているところに、外因性のものが加わって発病するので、内因性の方が主になっていることが非常に多いのであります。ただし、コレラ菌や性病の菌などの強烈な外因性のものは例外であります。

ですから、近視という眼疾を考える場合でも、肝力の低下という内因性の問題がまず根本にあることに注意しなければなりません。

◎年を重ねれば遠視になるのが自然

遠視は後天性のものです。年とともに肝力が衰弱し、それとともに遠視になります。もし、老人になっても遠視にならないとすれば、これは正常ではありません。老年になっても、肝が旺んであれば、肝過旺となって他を傷つけることになります。虚する年齢になっても実しているのは、他を妨害しています。つまり、年齢相応の状況になるのが自然で最もいいのです。人並みに体力を持った人にはこういうことがいえます。

◎眼疾患は一過性のもの

一般的にいう眼疾患は一過性のものですが、これも後天性のものです。肝機能が低下したために問題が起こり、眼疾になります。

◎盲視は食べ物が原因となる

盲視は先天性のものと後天性のものがあります。先天的に全く見えない人は少ないです。先天的に視力の弱いところへ、甘い物や冷たい物を摂り過ぎる、または体質的に合わない食事をする、体を異常に冷やして腎気のを低下させ、極度な悲しみを受けて肺を亢進させ、肝力を弱らせるなどが盲視になる例が多いようです。盲視の人は、極端に甘いものが好きであり、食の太い人が多いようです。そのような原因のよって、腎の力が保てなくなってひらいてしまい、だらんとして働きが落ちてしまいます。

ここで眼の成立について述べます。

眼は、腎が根、肝が幹、心が葉という組み合わせで成っています。

腎は発電所であって電源であるので、見るという力は腎力によるものです。腎力がなくなれば、目の前が暗くなり見えなくなります。白内障や緑内障などの復調しない眼疾は、全て腎機能の障害によるものであります。

肝は送電線に当たります。肝化作用により、遠近の調整を行います。そして、電源と電灯をつなぐ役割を果たします。肝力が低下をすると、視力に拡小・遠近の変調をきたし、明確に見えていたものがぼんやりします。

心は電灯です。心機能が低下すれば、視力そのものはあっても明るさに欠けたり、明るさを嫌ったりして非常に目が疲れ、見えすぎて疲れるなどの症状が出ます。また、凝視性がなくなって、眼がキョロキョロと動かさずにはいられなくなります。

以上のように、眼は腎・肝・心の協力によってなっていますので、これらのどれかが落ちこんでも、視力の変調がきたします。