鍼灸オタクは早死にする 684

漢方講座 4

〇漢方薬=中国?

日本の漢方医学は、中国から伝わった医学から発展しました。仏教などの大陸文化とともに、初めて古代中国の医学が日本に入ってきたのは、5~6世紀頃といわれています。それから長い時代を経て、中国医学とは異なる特徴を持つ、日本独自の漢方医学が形づくられました。その延長にあるのが、いま私たちが飲んでいる漢方薬です。

現在、日本で使われている生薬は、約8割が中国から輸入されています。本家本元の中国でも、生薬から成る中国医学の伝統的な薬がたくさん使われています。しかし、中国には漢方や漢方薬と呼ばれるものはありません。

〇中国の伝統医学は理論を、日本の伝統医学は実践を重視

中国では、自国の伝統医学を「中医学」といい、生薬は「中薬」、漢方薬は「中医薬」、製品として製造されている漢方製剤を「中成薬」と呼んでいます。

日本では西洋医学を学び、国家資格を持つ医師が漢方薬を処方することができます。一方、中国の医師資格は中国の伝統医学を学んだ「中医」と、西洋の医学を学んだ「西医」の2種類に分かれます。中国では中医学と西洋医学を教える大学がそれぞれ別にあります。

中国の中医も、日本の漢方医と同じように四診(望診・聞診・問診・切診:漢方医学における診断方法とその手順で、陰陽のバランスの崩れ具合を、表証か裏証か、熱証か寒証か、実証か虚証かなどに分類する手法)を行います。そして患者の証(証とは自覚症状及び他覚的所見からお互いに関連し合っている症候を総合して得られた状態(体質、体力、抵抗力、症状の現れ方などの個人差)を あらわす漢方独特の用語)を診断し、治療方針を決め、薬を処方して治療します。その過程を中国では「弁証論治」と呼び、理論的に体系化されています。

一方、日本漢方は理論というより、積み重ねた経験から実践的に治療をすることを、江戸時代以降、特に尊ぶようになり、その点が大きく異なります。

薬の使い方も、中医と日本漢方では異なっていて、中医では生薬を組み合わせて細かく量を加減していくオーダーメイド処方が中心で、薬の用量も日本の3~5倍くらい使用されます。それに対し、日本では決められた組成から成る漢方薬を、そのまま使うのが一般的です。

日本の漢方薬と中国の中医薬は、似ているところもたくさんありますが、同じものとはいえません。