鍼灸オタクは早死にする 749

◆東洋医学講座 141

〇肝と角音

▽角音はカ行の音

音は腎と肝で司っていますが、そのうちの角音はカ行の音で、肝が司っています。

角音は牙音で、口唇の両側の犬歯の位置に当たる所で発声するものです。

カ・キ・ク・ケ・コの発声音が、正常よりも高いか、あるいは低いかは、肝の変動を示すものです。

音は全部肝からきているので、朝運動ができないときに読経をしたり、歌ったりするのも、一つの肝の運動です。必ずしも体操をしたり、走ったりするだけが運動ではありません。

▼内臓運動

ここで運動について触れてみます。

重症患者などの場合には内臓運動をします。この運動は結局、心臓を中心に賦活するのですが、それには小腸を刺激し、その働きを高めます。

人は心臓の動きをどうすることもできないので、第二の心臓である小腸機能を高めることで心臓の働きを助けます。小腸運動を活発にするには、腹式呼吸が最適です。以下の方法を紹介します。あくまでも病人を対象にしたものです。

まず、あおむけになります。そしてひざを立てます。足を伸ばしていますと、おなかの筋肉が緊張をして、自由にお腹を膨らますことができないからです。おなかの筋肉、腹直筋がたるんでいれば腹内臓器は自由になるので運動がしやすくなります。

そして、へそを中心としてへそから下を交互にへこませたり、ふくらませたりします。ここで注意しないといけないのが、下腹をふくらませるときに、上腹を一緒にふくらませないようにします。上腹をふくらませると、胃拡張になりやすくなります。

下腹をへこませることが第一です。へこませれば、あとはその反動でふくらみます。はじめは上手くいきませんが、次第に上手にできるようになります。ここまでは腹式呼吸法と同じです。

ゆっくりと3~4回繰り返した後、おなかをふくらませた状態で。腰を左右に振ります。その場合、足先の方へ血液を送り込むようなイメージで、くっとおなかをふくらませて振ります。そうすると、ひきつっている腰回りの筋肉や背筋がゆるんできます。肩こりの人にもとても効果があります。何度かこの運動を繰り返すことによって、体全体が軽くなります。

ようするに、小腸を中心に丹田呼吸をします。それが終わったら、へそから上、心下部を目標とした運動をします。「フッ、フッ、フッ」と笑いながら息を吐きます。これで肝が刺激されます。胸がつっかえる人、胸が重い人、動悸のある人は、心下部が硬くなっています。肝臓が腫れているからです。「フッ、フッ、フッ」と息を吐きながら、心下部をへこませることによって横隔膜を引き上げ、またコリをゆるませ、肝運動を助けます。そして、心運動を活発にします。心下部が硬いと横隔膜運動が不十分になり、横隔膜運動がうまくいかないと不整脈が起こります。この運動を寝た状態で行うので、刺激は相当強くなります。内臓のためにいい運動になります。この運動は、胃下垂症の人、便秘のある人にも好適です。これらは、肝と心を目標とした運動です。

次に、片足を伸ばします。もう一方の足は立てて、足首の回転を行います。内側回しをします。血圧が高い人は外側回しをしますこれを左右の足、交互に行います。これは肝と腎の運動です。それから手首の回転運動です。ゆっくりと強く行います。これは心と肺の運動です。

体力の落ちている人は、足先を軽く刺激するだけでも十分効果が期待できます。このように、体が弱っている人には弱い人のための運動があります。

ここで紹介した内臓運動は、運動をする暇のない人にも最適で、体力の落ちている人などは床で行いましょう。

とくに一年では春、一日では朝、運動が必要です。肝臓が動力源になるからです。体操や運動は、その動力源を増強する重要な役割をします。

運動と労働は違います。動き回っていても、運動や体操のように、まんべんなく五臓を働かせて、弱っている臓器を賦活させ、五臓力を水平にしようとすることは、仕事にはできません。労働は臓器のエネルギーを使って仕事をするので、からだに負担がかかってきます。労働は一定の姿勢を長時間する場合もあります。自ずと労働と運動は違ってきます。