◆東洋医学講座 151
〇肝と干支
甲乙は十干であり、寅卯は十二支を表す符号の一種です。この十干と十二支を合わせて干支といっています。
十干は、数字を代表する符号であり、また、数それぞれに自然の真理の働きがあります。
例えば、庚申(かのえさる)の日は、庚も金、申も金で、この日は金気が旺んに働いているので、肝に対しては、この金気によって相剋現象を起こし、肝が自由になりません。したがって、肝が弱い人は、あまり調子が上がりません。
甲子といいますと、甲は十干の初め、子も十二支の最初にあるので、〝いの一番〟という意味あいをもちます。「甲子園」という字も、そういう意味あいを含めてつけられたのではないでしょうか?
▽肝と甲乙の関係
甲は木陽で、春気を示し、この大気にあうと肝気は旺盛となります。甲は象形でみますと、甲の字の「日」は太陽を示しており、その太陽が地上の高さに見えるところです。それは低い太陽を意味します。つまり、春の日です。その春の陽によって芽ばえた状況を甲は示しています。したがって、春の気が働いています。人間では、誕生したところであり、十二支では寅に当たります。
十干は太陽の働きをいったものであり、十二支は月の作用を代表させている符号でもあるので、人間はそのどちらの恩恵を受けていることになります。その作用を受けるのは、自然のことです。
乙は地平線上にある朝日に向かってものごいする姿です。つまり、屈曲の姿です。
甲は一で、乙は二となるので、勢いからいいますと、乙は甲より落ちて、従う形になります。乙年生まれの人は、上に立つ立場より、人に従うほうが向いていますし、またそのような人が多いです。自然の働きがそうさせています。
▽十干の意味
次に、甲乙以下の十干の符号の持つ意味を簡単に説明します。
丙は「炳」と同じで旺んなことです。火が旺んな様をいったものです。この火は、君火に相当し、また太陽の火といったことを示します。
丁は、やはり旺んの意で、こちらは陰の火です。明るさの中に暗さが入ってくる陰遁の始まりであり、丙の陽遁の君火に対し、こちらは相火であり、月の火といえます。
戊は、繁茂の茂に通じ、草木が旺んにしげる様をいったものです。陽気が旺んであるところへ、土気が働いています。火が消えれば灰になりますが、火が旺んになれば、土になります。したがって、熱が最高に達したあとは土気が旺んとなります。土気は火気に挑発されて旺んとなります。
己は陰の土で、姿を変えます。つまり、変化です。紀元節の「紀」と同じで変化点になっています。これからの子孫をつくる種がつくられるところであり、陰気が働き出すところです。
戊は陰気内在の変化点であり、己はそれが外側へ向けて働き出すところの変化点で、戊己ともに変化点です。なぜ変化点が二つもありかといいますと、それは変化する幅があるからです。例えば、冬至以後は陽が長くなってきますが、地上に春が来るまでには時間がかかります。人間には節分や立春の頃になってやっと分かります。人間の行動も同様です。心の中で決めたことを始めるまでには時間がかかります。このようなことを含めて、自然というものに幅があるのでそのようになります。これはみな自然の仕組みです。
庚は、あらたまっていく勢いが旺んなことを示します。
辛は、大きな生命力の出発するところで、十二支では戌亥に当たります。
壬は、地中に姙(みごも)ることで、それは表面に出ないために、中で働いているのがよく分かりません。中で育てられています。
癸は、姙(みごも)った形から地上に伸びようとして、いつ発芽したらいいかをうかがっているときです。