鍼灸オタクは早死にする 788


身体訓練法

レッスン1-14

▽良い姿勢とは

▼立つことと座ることをつなぐ力学

●間違いと改善の見分け方

椅子の腰をかけ、両足の下に体重計を置いて、以下の練習にとりかかります。

普段の立ちあがり方をします。腰かけたまま両足を体重計にのせると分かるかと思いますが、数値は体重の約1/4の辺りを指し、それが両脚の重さになります。

次に数値の動きに注意しながら立ち上がります。すると、数値は体重を示す数字よりもはるかに高く出て、再び体重よりも低く戻り、前後を示しながら、最後に正しい数値で静止します。

立ち上がり方が良くなったときに、もう一度体重計で計測します。効率のよい動きができるようになれば、体重計の数値は立つ動きに合わせて少しずつ動き、決して自分の体重を示す正しい数値より先には進みません。無駄な努力をどのくらい節約できたかを計算してみれば、正しく立つにはいかにわずかな力しか要らないことが分かります。

さて、再び椅子の前端に座り、上体を揺らせ、どの位置でも急に力を加えずに、その動きを次第に大きくします。立ち上がろうとする積極的な意思は一切捨てます。それを持っていると無意識のうちに習慣的な立ち方にもどってしまうからであります。前後に揺れる動きができるだけの力がありさえすれば、立ち上がりには十分であります。

では、どのようにすればいいのでしょうか?ここでいくつかの補助手段を挙げますが、最初の方法で上手くできたとしても、全部行ってみる価値はあるかと思います。

①脚の筋肉を意識して働かせることを止める

前への動きのとき、膝と両足を床から浮かせ気味にします。そうすると前に傾いても、脚を伸ばす役目をする腿の筋肉を収縮させずに済みます。両足を床に押し付ける力が強まるのは、この筋肉群を収縮させるからであります。もはや何ら努力を加えなくても、骨盤は椅子から浮き上がり、座った状態から立った姿勢に移れるでしょう。

②首の筋肉を意識的に働かせることを止める

前後に揺れながら、右手で頭のてっぺんの髪をつかみ、そっと軽く頸椎の延長線に沿って上へ引っぱると、首の筋肉が緊張しているかどうかを感じとることができます。前に傾いたときに首筋の筋肉の緊張がなくなれば、無駄な力が加わることもなく、それを数回繰り返し、呼吸を変えなくても、つまり胸で無駄な努力をしなくても、前への動きから自然にからだは立った状態に移ります。

髪を左でつまんでこの練習を繰り返します。普通は両手の間では、効果の差異があります。

③立ち上がろうとする意志を捨てる

前への動きを、脚や呼吸器に努力感が生まれるところ、つまり、リズミカルな動きがとまって筋肉の力が強まり出すところまでもっていきます。この位置までくると、立ち上がることはそれまでの動きの延長ではなくなり、努力して急激に押し上げねばならないものとなります。そこから先の動きを中断し、動きを止めたときの姿勢のまま静止します。立ちあろうとする気持ちを捨て去り、その結果として体のどの部分がほぐれるかを確かめます。その部分の力は、正しい立ち方にとって不要のものです。これは簡単にできることではなく、細かい注意力を働かさなくては、それを見分けることはできないでしょう。立ち上がろうとする意図を放棄しますと、この静止した姿勢はたちまち座っているのと同じ快いものになり、立った姿勢に進むにしろ、座った姿勢に戻るにしろ、どちらの動きも同じようにたやすく完成させることができます。

④リズミカルな膝の動き

椅子の前端に座り、両足を開き気味にして楽に床に置きます。両膝を左右に動かし開いたり閉じたりを繰り返しながら、上体の前後運動をはじめ、動きがリズミカルに規則正しく、楽にできるまで続けます。頭のてっぺんの髪を引っ張り、膝の動きを一切妨げないようにしながら立った姿勢に移ります。もし、体の調整がうまくできていないと、両端が一番閉じたときか開いたときのどちらかの位置になった瞬間に、立ち上がろうとします。どちらの場合にも、はっきり気がつかないくらいですが、膝の動きは中断します。

⑤行動を意図から切り離す

改善された行動の必要条件ひとつは、行動を意図から切り離すことであります。次にその練習をしますが、これは、自分の行動の質を理解する助けとなり、それを吟味する手段ともなります。

これまでと同じように椅子に座り、もう一つの椅子の背をすぐ前に置きます。目の前の椅子の背に両手をのせ、立ち上がろうと思わずに、お尻を持ち上げることだけを考えながら立ち上がります。立ったまま両手を椅子の背にのせ、座ろうと思わずに、お尻を椅子の上におろすことだけを考え、それを念頭において動きを行います。

お尻を椅子に置くのが座るための手段であり、お尻を持ち上げるのが立つための手段であります、このようなやり方は、行動の目的ではなく、それを遂行する手段に注意を集中することができます。多くの人は、そのように行えば、自分の行っていることを考えることなく、座ったり立ったりできるのであります。行動というものは、目的を考えているのか、それともその手段を考えているのかという区別がなくなったときに、はじめて正しく行われるのであります。行動に欠陥があるときには、二つの思考方法のうちのどちらに従って動いているのかが一目で見てとれるもんです。