鍼灸オタクは早死にする 793


◆東洋医学講座 163

〇肝の実邪

斯学では「実」や「虚」という言葉が多く出るので、ここで少し掘り下げて説明します。

▽「実」「虚」「邪」の意味

実とは、充実、力が強い、力がみなぎっていて外に発散する力が強いなどの意味であります。

虚とは、実に対して内容が虚弱、力がない、力が乏しく外に発散抵抗する力が弱いなどの意味であります。

邪とは、体に対して悪い影響を与えるもの、西洋でいう菌類やウィルスなども当たります。

肝実邪とは肝系に力があって、そこに病邪が侵入して病気の状態を現しているものであり、肝虚邪とは力のない抵抗力の弱い肝系に病邪が侵入して病状を呈しているものであります。

ふつう実証の人といいますと、丈夫な体の人をいい、虚証の人とは、体の弱い人をいうのですが、丈夫な人は弱い病邪ではおかされなく、犯されるときは、強い病邪におかされるので虚証の人に比べて病状も激しいです。しかし、めったに病気はしません。

これに対し、虚証体の人は、体力がないのでちょっとの病邪にもおかされるが、反応が早いので軽く済みます。

このことからも分かるように、体が弱い人はいつも体の調子はすぐれないのですが、よほど無理をしない限りは大きな病気にならないのであります。

▽肝実に邪が入った場合

肝実の人が邪疾を受けますと、その邪盛が木生火によって心系に及び、心火の働きを旺盛にさせます。心火が五系の均衡を破って亢進しますと、その剋を受けるのは肺金であります。

肝木の実したものが亢進すると、

①木生火と火力が強まって、心火が亢進する
②脾土は木剋土と肝亢進の剋を受ける
③肺金は金剋木が逆に木剋金と逆剋されて侮りをうけるとともに、旺した心火に火剋金と二重の剋を受ける

以上のように、この肝実に邪が入った場合は、肺系・脾系が剋されやすく、この二者の症状が出やすいです。

ここでは、自然律動と体質によって、病邪の推移がどうなるかを知るための一考察を述べているのであります。

▽肝疾の好むもの、嫌うもの

・燥を嫌う
・湿潤を喜ぶ
・風に当たるを嫌う
・酸味、辛味の過ぎるのを嫌う