鍼灸オタクは早死にする 797


◆東洋医学講座 165

〇肝の実邪

肝気旺んなものは血が多くあります。したがって、それが病みますと眼が赤くなり、両方の脇の下が痛み、下腹が引きつります。

よく怒り気逆するときは、めまいを起こし、耳が聞こえなくなり、人のいうことが分からず、頬が腫れます。

肝の実邪の方法は瀉すのがよいです。

①眼が赤くなる(血が頭や顔にのぼる)
②脇下が痛む(肝胆の経絡が緊急する)
③下腹が引きつる(腹直筋が緊急する)
④怒りっぽくなる(精神が亢進する)
⑤気逆する(肺気を侮り、亢進させる)
⑥めまいがする(あたまがくらくらする)
⑦耳が聞こえなくなり、人の言が解せない(肝が急に強く亢進すると、一過性腎虚となる)
⑧頬が腫れる(肺に逆気して顴骨辺変動)

以上の病状は、肝虚でも一時亢進が強いと現れるものであります。

▽肝の実邪の病状

①眼が赤くなるのは

眼が赤くなるのは、肝臓が血液をコントロールを司っているからです。そして、肝の性質は中庸性を保ちがたく、過不足性があります。つまり起伏が激しいのであります。これは、やるときはやる、しかし気が抜けるとまったくやらない、といった三碧木星の性質に通じています。肝臓がそのような性質を持っているので、その人もそのような起伏の激しい性格になりやすいといえます。

他の臓器よりも肝臓は亢進しやすくできています。上実下虚的な働きは肝の亢進によるものです。したがって、血液も上に昇って最終的には頭に上がり、目も充血します。頭痛も起こり、カーッとなりやすくなります。

このように一過性にくる、激しくくるようなものは、肝臓の仕業であることが多いのであります。とくに、眼が赤く充血するのは、眼は肝の外候であり、充血の赤色は肝が化した心旺で、眼の赤色は肝の変動を示しています。

②脇の下が痛むのは

脇の下が痛むのは、経絡の肝経、胆経が体の側面を走り、その中でもとくに脇の下が敏感に感じるところだからです。そして、肝経よりも陽経の胆経のほうにより痛みを感じます。陽経は表面に敏感に、つまり表痛として感じ、陰経は内鈍痛として感じるので、人には陽痛のほうが感じやすくなります。胆経は下肢の外側にもめぐっているので、その部分を圧してみればかなりの圧痛もあります。

③下腹が引きつるのは

下腹部が引くつるのは、病が深いほうへ入っている証拠です。肝臓機能の低下が慢性化して深いところをおかし、深い傷(やぶ)れを起こしているからです。そうなりますと深い筋肉が引きつれて、陽経よりも陰経に病状が出てきます。つまり、胆経よりも肝経に出てきます。腹直筋が引きつっている多くの人は、肝経が病みやすくなってきます。この腹直筋をゆるめるには、期門や京門、季肋部にあるツボがよく効きます。また、天枢穴、鼡径にあるツボを用いても有効です。鼠径部を用いるときは深鍼は行ってはいけません。

腹直筋をゆるめるのに膝まわりにあるツボもよく効きます。脾経や胃経のツボを用いるといいでしょう。と言いますのも、肝胆の夫に対し、胃脾は妻に当たるので、やはり夫が具合悪いときは妻の力が欲しいのです。夫婦関係というのは相剋関係ですが、剋すばかりではありません。働く理は一つですが、どこで働くかによって形は違って出てきます。

例をあげますと、ケイレンしている場合、例えば胃ケイレンや子宮ケイレンが発症したときは湯一杯のコップに砂糖を入れて飲めば止まります。これも、肝の亢進に対して土性の妻の力を借りて沈静させるからであります。やはり、夫婦拮抗のよい例です。

身体でも夫婦関係でも真理が同じです。体が弱って助けが欲しい場合には、やはり妻の力を必要とします。この関係は剋しやすいですが、また反対に助ける働きも強く持っています。

④~⑧の症状についてはここでは省略します。