胎児の消化器系の発達

胎児の消化器系の発達

大人の消化器系の臓器は複雑な構造をしています。小腸は複雑に蛇行して腹部に収納され、その周囲を囲うように大腸が走っています。腸の周囲には肝臓、胆のう、すい臓などの臓器が配置されています。

このような消化器系の臓器も、初期の胎児では単純な1本の管です。この管のおおもとは、卵黄嚢と呼ばれる袋状の組織の一部が、胎児の体に取り囲まれてできます。そして、消化管は胎児が成長するにつれて伸びたり曲がったり回転したりして、狭い空間に上手に収納されていきます。

胃は、受精後第4週頃に出現します。初めは消化管(前腸)の一部が少し膨れただけですが、その後、片側が早く成長し、一方が大きく膨らんだ形になります。さらに、胃は正面から見て時計回りに回転し、横に寝るような格好になります。

小腸と大腸は急速に成長するために、腹部のスペースが一時的に足りなくなります。そのために腸の一部はへその緒にいったん押し込まれる格好になります。その後、腹部のスペースが拡大するにつれて、腸は再び腹腔に戻ってきます。受精後第11週頃になりますと、小腸の周囲を大腸が囲い、盲腸が下方に移動して、大人と近い配置になります。

肝臓のもとは、受精後第3週の終わり頃に腸から突き出るようにして発生します。肝臓は胎児期には、血液をつくる働きをもっています(それまでは卵黄嚢などでつくられている)。この機能は出生する頃にはほぼなくなり、その後、血球をつくる働きは骨髄へ移っていきます。

すい臓のもとは、受精後第5週頃別々の場所に二つに分かれて発生します。胃の少し下あたりの腸の背側(背側膵芽)と腹側(腹側膵芽)の二カ所で発生します。その後、腹側膵芽が腸の管をぐるっと回り込んで、背側膵芽に接近、合体して完成形のすい臓になります。

参考文献・引用・2002年・『人体完全ガイド』改訂第2版・ニュートンプレス