妊娠

妊娠

通常、受精が行われるのは卵管膨大部と呼ばれる、卵管末端近くの太い部分であります。膣から卵管膨大部までの道のりは約20㎝もあります。膣内に放出された長さ0.06㎜の精子がこの距離を進むのであります。

卵管膨大部にたどり着き、卵子に運よく出会える精子は、1回の射精で放出される数億の精子のうち、わずか数百でしかありません。高い運動能力を持ち、かつ運よく出会えた精子だけが受精のチャンスを得るのであります。

卵子にたどり着いた精子は最後のサバイバルレースに臨みます。卵子は糖タンパクでできた透明帯という層と、多数の卵丘細胞におおわれています。精子はこの二つの層を突き抜け、卵子の内部に核を放出します。そして、卵子の核と合体することで受精が完了します。

1個の精子が卵子に侵入すると、重要な変化が起きます。透明帯の性質が変わってしまい、他の精子を通さないようになってしまいます。仮に、二つ以上の精子が受精してしまうと、受精卵はその後正常に成長できなくなります。透明帯のこの働きは多数の精子を同時に受精することを防ぐ仕組みなのであります。

受精卵は分裂を繰り返しながら卵管の中を進んでいきます。受精卵が分裂してできた細胞の集まりは胚と呼ばれます。受精から5~6日後子宮に到着する頃になると、透明帯が破れて胚が外に出る孵化という現象が起きます。

その後、胚は子宮の壁にくっつき埋まっていきます。これが着床です。着床の完了で妊娠が成立します。着床した胚は成長を続け、やがて母体の血液から栄養などを受け取るようになっていきます。

そして、約9カ月後、誕生の時を迎えます。

参考文献・引用・2002年・『人体完全ガイド』改訂第2版・ニュートンプレス