なぜあるの?男性の乳首

人体には、何のために存在するのか分からない組織や器官がたくさんあります。そのなかに、存在意義がはっきりしない代表的なものの一つが、母乳が出るわけではないのに存在する、男性の乳首があります。

妊娠2か月ごろ、胎児のわきの下から股の付け根辺りには、後の女性では乳腺になる乳腺堤とよばれる線状の盛り上がりができます。このせんは皮膚の中に沈み込んでいきます。ここまでの過程は男女一緒です。

その後、女性では思春期以降、乳腺がホルモンの作用で発達していきますが、男性はそのままの形で残ります。つまり、男性の乳首が存在するのは、胎児のこの部分の体づくりが男女で共通しているからなのです。

ちなみに、ヒトの場合、乳房は通常左右に1対ですが、まれに別の場所に小さな乳房や乳頭ができることがあり、副乳と呼ばれます。胎児のときに、乳腺堤の一部が消えずに残ったのが副乳なのです。

イヌやネコを見ればわかるように、哺乳類の乳頭は一対に限りません。ヒトの副乳も、一度に複数の子供を産んでいたヒト祖先の哺乳類の乳頭の名残と考えられます。つまり、副乳も多毛症もような先祖返りの一種といえます。

副乳は、女性の約5%に見られ、男性でも1~2%見られます。小さいものは、ほくろと見分けがつきにくく、ほくろと違い色が薄く。でっぱっていたり、中央が凹んでいたりします。わきや足の付け根に、ほくろのようなものがあれば、もしかしたら副乳かもしれませんよ。

参考文献・引用・2002年・『人体完全ガイド』改訂第2版・ニュートンプレス