睡眠と病因

睡眠と病因

〇睡眠と休養

最高の休養は睡眠することであります。睡眠には、睡眠のとり方、時間数、時間帯があります。

まず、睡眠方法でありますが、板の間のような硬いものの上に寝る方がよいとされています。しかし、体の下側に面する背中や尻などの一部にだけ体重がかかると、そこだけが血液の循環が悪くなるのでよくありません。

また、あまり柔らかくふわふわしたものの上でも、背中が曲がりよくありません。

床に接する部分だけに体重がかからず、なおかつ背中が曲がらないものがよいとされます。

そして、最も重要なのは寝がえりができることであります。寝返りができないと血液の循環が滞ります、体動ができるスペース、寝返りを助けてくれるような素材、寒さで胎動を妨げないような温度などにも気をつけなければいけません。

電気で温めるような毛布やシーツは、肺腎機能に変調が生じるので、なるべくやめたほうがよいです。昔から頭寒足熱といいますが、足もとを温める安価程度のものがいいでしょう。寒くてどうしても眠られない場合は、体を締めつけないものをあつぎするといいでしょう。

夜半2時頃からは体温と気温が急低下するので、寝冷えに注意しなければいけません。夜休むときの体温を気温に合わせて寝ると、夜半の冷え込みにやられます。古人は、この時刻を鬼門の刻といって恐れていました。この冷えは、一度や二度体内に引き込んでも平気ですが、積み重ねると病気の原因となります。とくに夏の寝冷えは危険で、体の奥深いところまで冷えが入り、体の深いところまではいって内傷します。

病気はたいがい素因と素因が重なり合って原因をつくり、また原因が積み重なって誘発した空く、ついに誘因に導火されて発症するのであります。

例えば、若年の頃より甘いものを好み、ケーキやアイス、チョコレート、あめ、ジュースなどを感情のおもむくままに飲食し、腎機能を極度に低下させる基礎生活をしていると、まだ若く力がある場合は、何となく根気がでず、肩がこる程度で発症に至らないですが、年齢を重ねるにつれて、腎力が低下し、消耗をさせたうえで、夜寝ているときに布団をはだけさせて、すっかり寝冷えると、腎が弱り、体が熱く感じ、喉が渇きやすくなります。このときに昼夜構わず冷たいものを過飲食します。来る日も来る日もこのような生活を繰り返します。このような悪い素因を積み重ねますと、その先天によっては、不妊になったり、流産したり、子供を生んだら虚弱であったり、最悪の場合は小児麻痺になったりすることがあります。

しかし一般的には、このような素因が積み重なって発症したと考えません。ポリオはウィルスのせいで、不妊は種がないせいであり、子供の虚弱は先天性であると、ほとんどが自分以外の責任と考えます。しかし実際には、全て自分の作った素因の積み重ねが原因となっています。

冬の場合、寝冷えをすることはありませんが、肺系から寒さを感じて熟睡ができません。睡眠が足りていないので風邪をひきやすいです。そのうえ、冷気に内傷されると、筋肉が硬直して、その人の欠点の筋組織に病気が出てきます。例えば、肩こりや背中の痛み、腰痛、関節炎、神経痛、めまい、自律神経失調、膀胱炎、更年期障害などが発症しやすくなります。

いずれにしても、複雑な生活と複雑に成り立っている人体なので、気がつかない意外なところで、病気の素因、病院をつくっていることが多いのであります。

〇睡眠時間数

幼いころは腎旺体で、腎旺期なので、起きている時間より眠っている時間の方が長いのであります。成長するにつれて睡眠時間が短くなり、成人になると8時間で間に合います。中年以降は6~7時間でも足り、老年では5時間で過ごせます。

老年は、体が冷えやすいので、熟睡ができにくく、すぐに目が覚めますが、日中の気温上昇時に眠気をもよおし、よく居眠りをします。

睡眠時間は、だいたい8時間が標準となっていますが、その人の体質によっても、年齢によっても異なります。

正しい時間帯の内に正しい生活をしてから眠り、すっきり目が覚めるまで寝るのが、その人に合った完全な時間数であるかもしれませんが、全て太陽とともに起居するというという時間内で、休息と睡眠をとることが、自然法則に従った正しい時間数であると思います。

・過食をすると眠くなり、睡眠時間を多くとらないと体がもたない。
・暖かい中で、ジッと体を動かさない姿勢でいつまでもいると眠くなる。
・36.5℃を少し上回る保温状態でいると寝過ごす。
・夜食をして(22時以降の食事)寝ると、胃腸が働いて、副交感神経が完全に働けず、絶えずうとうとして熟睡できないで、よく夢を見る。
・午前2時頃から体温と外気温が下がるので、寝室が寒いと、寒気が肺呼吸を冷やし、内外の寒冷によって安眠できなくなる。
・体温が高い人はよく眠れるが、恒温を超す熱さになると(寝る直前に入浴をする)、逆に体温冷却の交感神経が働いて眠れなくなる。

夜にどうしても眠れないのは、交感神経が働いているからであります。裏の副交感神経を働かせるように、伏臥(うつ伏せ)すれば20分以内に眠れます。もし伏臥が不可能なら、右下の横臥でもよいでしょう。

〇一日の睡眠時間帯

正しい睡眠時間帯は、21時から3時を中心とした時間でありますが、余勢が働くので、1時間ずつずれた22時から4時の間であります。四季によっても多少異なりますが、だいたいこの時間帯に熟睡することが望ましいです。

寝ている状態は、腎系機能が十分に働ける姿勢であり、睡眠することは、心臓が完全に休息でき、腎系が完全に働ける状態であります。すなわち、睡眠は完全休息ができるのであります。

要するに、腎の働く時間帯が睡眠の時間帯であるということです。

次に腎が働く時間帯を示します。腎の働く一日での時間帯は、申、子、辰の刻といわれ、15時から発動し、亥の刻の21時から積極的に働き始め、子の刻の23時~1時には完全に大地の地気に結ばれて根(寝)づくといわれています。丑の刻の終わる3時まで熟睡し、次の丑の刻の4~5時には肝系が働くので、寝ながらでも、体内は起立の準備をします。

すなわち、完全熟睡は、夜の22時から朝の4時が最適で、4時以降は起立(起きるため)の準備のため、体内は半眠状態となり、体にとって完全休息とならないのであります。

もし、この時間帯に逆らった生活をする場合は、8時間以上睡眠をとっても完全に休まらないので、病気の素因となります。

例えば、夜0時頃に寝て、朝8時頃に起きれば8時間睡眠がとれますが、2時間が自然に逆らっているので、この分だけ寝不足となります。腎・心の機能が低下して、毎日積み重ねれば、その人の体質の欠点に荷重がかかり、ついに発症することになります。

〇四季の睡眠時間帯

四季における睡眠時間帯は、春・夏・秋は比較的早く寝て早く起きて、晩秋・冬・早春は早く寝て遅く起きるのが、自然法則に順応しています。

・春・・・21時に寝て、朝6時に起きる。
・夏・・・21時に寝て、朝5時に起き、昼寝をする。
・秋・・・21時に寝て、朝6時に起きる
・冬・・・20時までに寝て、朝7時過ぎに起きる。

冬は長くゆっくり寝て、一年の大きな休息をとって、動的冬眠をすることが望ましいです。