鍼灸オタクは早死にする 918


高血圧を考える 26

〇薬で下げる危険を示すデータ

▽降圧剤の服用で下がる自立度

人の助けを借りずに身の回りのことが出来る人の割合を「自立度」と表現すると、NIPPON研究の調査の結果では、最大血圧が139までは自立度は変わりませんが、140を超えると自立度が下がります。血圧が高くなる程、自立度がどんどん下がる、ということであります。

この結果だけを見ていますと、やはり血圧は低くないと、という思いに駆られるのは無理がありません。しかしこれだけのデータだけでは「上が140を超えたら降圧剤で血圧を下げなければならない」と、決して短絡した結論をしてはいけません。

それは降圧剤を服用者を加えたこの結果は、最大血圧がどの数値であっても、降圧剤を服用した人よりも、降圧剤を服用しなかった人の方が、14年後の自立度が高いという結果がありました。

同じ血圧の値、例えば140の人同士で降圧剤服用者と非服用者を比較するのは良くありません。降圧剤服用者は、服用して血圧が少し下がっているはずなので、降圧剤服用者と比較すべき降圧剤なしの人は、下の血圧値の人と比較するのが公平であります。そうしますと、血圧が高くても降圧剤なしの方が自立度が高いのであります。

もっと単純に調査結果を見ますと、現在の基準では重症高血圧とされる180以上で降圧剤を飲んでいない人でも、降圧剤を飲んで上が120から179に抑えていた人の自立度はほとんど変わりがありません。

年齢別にみますと、最大血圧の値別の14年後の自立度は、多少ばらつきがありますが、やはりどの年齢でも、降圧剤を服用するよりも、服用しないほうが14年後の自立度がは高かったのであります。

とくに60歳までと71歳以上では、最大血圧が179でも、14年後の自立度にまったく影響が無いほどでした。

また、61から70歳の人で、降圧剤を使用して最大血圧を120未満に引き下げている人に、とくに14年後の自立度が低くなる傾向が見られました。全年齢でもそのことは顕著です。

次に最低血圧(拡張期血圧)で見ますと、降圧剤なしの人は、100から109までの人の自立率はほとんど横並びでした。つまり、最小血圧が109までは、14年後の自立度に全く影響がないということであります。110を超えると流石に、自立度は低下するようです。

降圧剤を服用したどうでしょうか?降圧剤を服用し中田人より、軒並みに自立している人は減少しています。110以上というのは、今の基準では「最重症高血圧」に分類されますが、その最重症高血圧でさえ、降圧剤を服用していなかった人の方が、降圧剤を服用していて80から90になっていた人よりも自立している人が多かったのであります。

降圧剤を使用している人の中で一番自立度が高かったのは、降圧剤を使用していても、最小血圧を100~109程度にゆるやかに抑えている人達でした。注目すべきはその人たちですら、降圧剤を使用していない最小血圧が110以上の人よりも、自立度が低いほどでありました。

「降圧剤を使用しなかった人は、最小血圧が100以上はもちろん、例え110以上であっても、降圧剤を使用して90未満や100未満に抑えた人達よりも、14年後の自立率が高かった」ということは、大変重要な意味を持っています。これまでの高血圧治療の常識を完全に覆すデータです。少なくとも、これが本当かどうか、プラシーボを対照としたランダム化比較試験を長期に実施して確かめる必要があります。

健康を考えるとき、自立の程度は大変大きな意味を持っています。高齢化社会は、いかに自立出来て長寿であるかが、最も大切であります。降圧剤は、単に数値合わせで飲むのではなく、いかに自立できる状態で長生きできるかを考えて飲まなければいけません。

降圧剤に、肝腎の自立の程度を高める効果がなく、むしろ血圧が少々高めでも降圧剤を飲まないほうがより自立度が高くなる、このようなデータがあるのに、それでも降圧剤を飲むべきでしょうか?

この調査では、降圧剤の種類までは特定されていませんが、おそらく当時の主流であったカルシウム拮抗剤が多数使われていたと思われます。降圧剤の副作用については今後詳しく述べますが、薬で無理に血圧を下げると、自立度が低くなるというのは注目すべきデータです。

つまり、高齢者にとっては全身に栄養を行き渡らせるために、血圧がある程度高めになることは自然なことなのであります。それを無理に薬で引き下げることで、細胞の隅々へ栄養が行き渡らなくなり、自立度が低下するものと考えられます。

脳への栄養が不足すれば、脳の働きが衰えて、認知障害が増加する可能性が心配されます。

参考文献・引用・2005年・『高血圧は薬で下げるな!』・角川書店・P83