坐骨神経痛

坐骨神経というのは1本の神経ではなく、腰椎の下部と仙骨上部から始まる神経の束をいいます。これらの神経は骨盤の中を通り、臀溝を通って膝蓋骨の後ろの少し上あたりで二つに分かれます。一つはひざの後ろからまっすぐにふくらはぎ、アキレス腱を通り、足底に達する脛骨神経であり、もう一つは、ひざの後ろから下腿の前面、外側に回り、向こうずねの前側と外側をまっすぐ足の甲に下る腓骨神経であります。

坐骨神経は気の幹に例えることができ、そこから枝のように細い神経が分かれて、皮膚や筋肉、関節などに達しています。

坐骨神経痛とは、腰からお尻、太ももの後ろからふくらはぎが痛む症状です。かかとやくるぶしまで痛みが走ることがあります。ときには外くるぶしから足の甲までしびれた感じになります。安静にしていますとあまり感じませんが、咳やくしゃみでも響き、体を曲げますと一層激しく痛みます。このような症状であれば、まずは座骨神経痛と考えていいでしょう。

かつて坐骨神経痛は、高年者の疾患と考えられてきましたが、現在では2種類あることが分かってきました。他の疾患が原因になって起こるものと、体質その他の原因によって起こるものであります。

座骨神経痛を引き起こす原因として第1に挙げられるのは、椎間板ヘルニアであります。椎間板ヘルニアの多くは、第4腰椎と第5腰椎の間、もしくは第5腰椎と第1仙椎の間に起こります。前述のように、座骨神経は腰椎下部と仙骨上部から始まっているので、この部分に椎間板ヘルニアが起こりますと、坐骨神経にたちまち影響を与え痛みが出ます。

原因の第2に挙げられるのは、子宮、卵巣など骨盤内臓器の異常であります。特に体質的に冷えがあると、座骨神経は痛みやすいです。

他にも、糖尿病などの代謝性の病気、泌尿器の病気、帯状疱疹なども座骨神経痛の原因になります。

原因がはっきりとしている場合は、元の病気を治せば痛みはおさまります。また、原因が分からない座骨神経痛でも、血液循環を改善してあげればたいていは軽快します。鍼灸治療などを根気よく続けるうちに、冷えに強い体質に改善され、座骨神経痛が起こりにくくなります。

しかし、現実に座骨神経痛が起こっている場合には、痛みを和らげる必要があります。その場合は東洋医学的治療法は効果を示します。

ー鍼灸治療編

◆主要なツボ

腰部 「腎兪」、「志室」、「大腸兪
下肢 「殷門」、「解谿」、「足三里
腹部 「五枢」、「居髎

など

◆治療法

背中、腰、臀部の順に、ツボを選択して治療を行います。次に「殷門」、「委中」、「承山」、「足三里」、「解谿」、「居髎」、「五枢」などのツボに鍼灸治療を施します。

鍼灸治療は座骨神経痛に効果がありますが、ことに慢性のものには灸が効きます。上記にあげたツボに3~5壮すえます。鍼治療の場合は、特に腰の「大腸兪」が主役になります。