テニスひじ(上腕骨外側上顆炎)

ひじと手首の関節を動かす筋肉である橈側手根伸筋は、上腕からひじの関節を超え、手首の関節を超え、指のほうまで伸びています。二つの関節を超えるという意味で二関節筋とも呼ばれますが、この筋に炎症の起こったものがテニスひじで、とくに筋と腱の移行部でトラブルが起こりやすいです。

ひじや手首は日常の動作でよく使われる関節で、テニスに限らず、重いものを持ったとき、子供を抱いたときなど、しばしばテニスひじは起こります。しかも、悪くなっても完全に休ませることは難しいです。

特に家事では、水道の蛇口をひねる、ドアノブを回す、ぞうきんをしぼるなど、橈側手根伸筋を使うことが多いので、テニスひじになるとなかなか治りにくくなります。

ところで、テニスひじの場合はレントゲン撮影をしても、腱が切れている、炎症のあとが仮骨になっているなど、症状がすすでいることが多く、整形外科の治療が必要になります。当然、この場合は鍼灸治療の対象から外さなければいけません。レントゲンなどで、所見があるか確認どうか確かめるといいでしょう。

テニスひじかどうかもう少し積極的に判断するのには、アメリカのガーデンが提唱した観察の方法があります。

①上腕骨は、ひじの部位で橈骨(前腕の外側の骨)と尺骨(前腕の内側の骨)につながっていますが、その関節のところを腱が通っています。そこを手で触るとRHギャップと呼ばれるすき間があります。RHギャップを圧迫したとき痛みます。

②手首の関節を背側に曲げ、検査する人が上からその手首を押さえるとひじに痛みがあります。

③RHギャップから上腕骨のほうに人差し指の幅ぐらい上がったところに、橈側手根伸筋の腱が骨についています。ここに圧痛があります。

以上、三つの条件にすべて当てはまるとテニスひじと判断されますが、このうち一つか二つしか当てはまらないときは、テニスひじの軽いものと考えられます。

-鍼灸治療編

◆主要なツボ

ひじと手首を動かす筋肉も、その筋肉を支配する神経も、大腸経の経路と一致して走っています。したがって、ツボは手首からひじの間にある大腸経の「偏歴」、「温溜」、「手三里」、「曲池」、「肘髎」を使用します。

◆治療法

橈側手根伸筋が弾力的に十分に伸び縮みすれば、腱が無理に引っ張られることがなくなります。そこで、痛みをとると同時に橈側手根伸筋の緊張をとるために、鍼灸治療を行います。

痛みがひじのほうにあるときは「曲池」と「手三里」、手首のほうにあるときは「偏歴」と「温溜」というように、痛みのある近くのツボと筋腹とを結んで、パルス通電を行います。特に痛みが強いときは、パルス通電をしている間に、痛みのあるところに置鍼をすると効果的です。

橈側手根伸筋を、ひじのほうから前腕を通って指のほうまで親指の腹で触診して、しこりのあるところがあったら、パルス通電をしている間にそこにも置鍼をします。

症状が軽かったら置鍼し、さらに軽くなったら単刺術でもいいでしょう。痛みやしこりのある場所がツボの位置と離れているときは、ツボにこだわらずに悪いところを選んで鍼治療を行います。

普段運動をしていない人がテニスをして、ボールを打った途端にビーンと腕が痛んだときは、肉離れを起こしていることが多く、肉離れの場所にしこりが触れられます。この場合は、しこりの中心に置鍼をして、しこりの上下(ひじ側と手首側)に単刺術を行うと痛みはとれるので、そのあとにテニスひじと同様の治療を行います。

◆メモ

ひじを痛めていると、その痛みのために腕や手が十分に使えないので、首や肩の筋肉が緊張して痛みが出ることがあります。ひじの治療と同時に、首や肩の治療も同時に行うといっそう効果的です。

また、頚腕症候群のためにひじに痛みが出ることもありますし、首の骨や関節に障害があり、そのために痛みが起こることもあります。