鍼灸オタクは早死にする 555

◆東洋医学講座 46

〇十二の大気作用

●酉(とり)の作用

「醸(じょう)」の字義から成り、〝醸成・醸造・成熟・年寄り〟の意です。申で陰気が伸び、酉でさらに陰気が加わり、草木の生気は遠心拡散性から収斂内在性へと化し、生気はみな根に帰し、枝先に残された果実は結実からさらに熟成されるときで、これを酉と名付けています。

人間でいえば、晩老期で、体は収斂硬直し、精神は円熟され、筋肉が一定収斂するので、心気の流れは容易になり、老人は気をもって生きられます。

冷気が増し、地上では結実が完熟し、地中の根に生気が帰します。万物は、外表の果のように硬め、陽気は地上から消散して、地中に内在性となります。

●戌(いぬ)の作用

「滅(めつ)」の字義から成り、〝滅する〟の意です。陰冷の気がますます加わり、地上の草木はこの陰冷殺滅の気に枯死状態となり、生気は地中の根の深いところに帰し、大地の母胎に守られます。また、枝先の果実は地に落ちて、戌の土に守られ、来春の種核となる準備をします。

人間でいえば、最晩年期にあたり、生命を滅し、地上の現世から姿を消して先祖の根に帰り、来世の種核となります。

地上は冷気が加わり、地中に内在・内蔵しようと働くときであります。万物は、外の冷気に対して外表を硬めて、冬ごもり態勢に入ります。戌の日に妊婦が腹帯をするのは、戌は収斂して守る働きがあるからであります。

●亥(い)の作用

「核」の字義から成り、〝核立〟の意です。陰冷の気が強く、地上では寒風が吹いて地表がどんどん冷却されます。その冷却に反作用して、地中には適当な地温が発し、戌の土に守られていた種子が種核を確立させ、発芽の方向に働きます。

人間でいえば、人体の大始である精子・卵子が核立し、そこに生命が宿って、心身としての核が成ります。

自然界の生物は、この期から生命の大出発をなしています。これを「天門」といい、万物の大始点であります。