鍼灸オタクは早死にする 718

漢方講座 21

▽証の立て方

漢方では、病気の本質を見極めて、患者の〝証〟を決めることが大切です。

まず、四診によって、患者さんの自覚症状、他覚症状、体力、体質、病気の原因や経過などに関する様々な情報を集めます。そして、それらを「陰陽・虚実・表裏・寒熱」という八綱の視点から分析して、証を立てます。その際、とくに虚証と実証の判別や、気・血・水の不足やバランスの乱れ、五臓の働きの不調に着目することが基本になります。

証の立て方のいろいろ①

●八綱で立てる

陽証:病勢は外向きで、温熱性。患者さんの病気への抵抗力は高い。
陰証:病勢は内向きで、寒冷性。患者さんの病気への抵抗性は低い。

実証:気・血・水の量や五臓の働きが十分な状態。
虚証:気・血・水の量や五臓の働きが十分ではない状態。

熱証:病気によって、熱が過剰になっている状態。
寒証:病気によって、熱が不足している状態。

表証:病気がからだの浅いところにあり、軽症。
裏証:病気がからだの深いところにあり、重症。

●臓腑で立てる

肝・心・脾・肺・腎の五臓について、気・血・水の過不足や、バランスの乱れから変調をとらえる方法。

●気・血・水で立てる

気・血・水の状態から変調をとらえる方法。

▼日本で発展した方法

日本の漢方は、古くから理論よりも実践を重んじてきたため、不調があるとき、それに対応する漢方薬を効率よく選ぶ手段が発展しました。実際の診察では腹診や、口訣(どの症状にどの漢方薬がよく効くのか簡単に示したもの)に基づいて、証を決めることもあります。

さらに、病気の進行によって証を決めることもあります。漢方のバイブルといわれ、昔から日本の漢方医が重視してきた『傷寒論』には、急性感染症などにみられる症状の変化と、その時々で使う漢方薬とが詳しく載っています。

また、病気の進行初期から順に「太陽病」「少陽病」「陽明病」「太陰病」「少陰病」「厥陰病」の6つに分けています。これを「六病位」といいますが、日本では「太陽証」「陽明証」などのように、病気の進行具合に基づく証を考えて、漢方薬を選ぶこともあります。

証の立て方のいろいろ②

●口訣(くけつ)で立てる

日本で発展した方法。経験に基づいて、特徴的な症状を目印にして効果のある漢方薬を導き出す。使われる薬の名前が証になる。

口訣の例
・水太りの人が変形性膝関節症になったときは、防已黄耆湯
・朝、起きがけに頭痛がする人には、釣藤散
など

●六病位で立てる

太陽病
病気にかかったばかりで、体表の近くにだけ症状がある状態。

少陽病
発熱と悪寒、食欲不振など、表面と内部の両方に症状がみられる状態。

陽明病
病気が消化管にまで進み、便秘や下痢などみられる状態。

太陰病
病気がからだの内部に進み、内部に由来する嘔吐、腹痛などがみられる状態。

少陰病
さらに進んで全身の代謝が低下した状態。寝込んで起きられない。

厥陰病
最も進んで生命が危険な状態。寒熱が混じる、複雑な症状がみられる。

参考文献・引用・2015年・『いちばんわかりやすい漢方基本講座』・成美堂出版