鍼灸オタクは早死にする 893


◆東洋医学講座 213

〇心と赤色

▽血色と四季脈との関係

▼四季における脈状の変化

春と秋の脈の赤は「少赤」と「小赤」であります。〝少〟のほうは加熱で、〝小〟は減熱であります。両方ともだいたい同温ですが、片方は減熱、一方は加熱によって同温になっています。片方は低温から熱が上がろうとする姿で、片方は高温から熱が下がろうとしている姿です。

したがって、当然身体の中の状態は違ってきます。波長が下から上がる場合は、力が盛り上がります。中心から外へ向かっていく姿です。片方は逆に、大きくなっているものが縮んでいくので収斂であります。まったくの正反対であります。同温であっても、片方は膨張しようとしますし、片方は収縮するので、脈の状態は異なるわけであります。

脈状を全部比較しますと、夏の場合は暑いので、脈管は最大に開いて血液を充満させて早い流れで冷却しようとしています。それを洪脈といいます。洪水のような脈です。熱の高いときの脈状です。冬でも洪脈の場合は、熱の高いことを示しています。からだの中では36.5℃を越されたら大変なので、それを冷やすために表面に動脈が浮いて、そしてスピード循環をします。

洪脈の状態に冷気が加わったのが秋です。したがって、夏の脈と比べますと、今まで100流れていた血液が60くらいにスピードが下がります。そして、圧が下がってきます。もう冷却の必要がなくなっています。したがって、脈状も変わります。外側から指で触れますと、外側が固く感じます。ビンビンと打って、洪脈とは少し異なりますが、少し似た感じがします。ところが。少し力を入れて押してみますと、フワーっとして脈に力がありません。それは、100流れていたのが60に減るので、表面は洪脈でも内面の力は弱くなって、ネギ状の脈になります。これを濇脈といい、秋の脈であります。

濇脈は、夏の洪水のような脈から少し表面が縮んで固くなり、なかにサクサクになった状態なので、ネギのような脈というわけであります。

それでは、春の脈はどのようなものなのでしょうか?

春のもとは冬です。冬は寒いので、小さく縮んでずっと深部に沈んで脈をうっています。これを沈脈といいます。血管も精いっぱい縮んで骨際まで沈んでいます。したがって、寒いときに身体が真っ赤になっていることなどは絶対にありません。そして、表面も毛穴もぎゅっと縮めます。寒いと毛穴が締まって鳥肌が立ちます。鳥肌は皮膚を収縮している表現です。

冬の沈脈が春になりますと、だんだん加熱されてきます。つまり、温められるので、パンをオーブンに入れて焼くのと同じように、赤からだんだん膨張してきます。したがって、春の脈は冬の間に縮んでいた血管の中に血液が冬の間よりもずっと多くの量が流れないといけないので、脈状はビンビン響くように感じられます。

そして次に血管が広がって、手で触れると柔らかい感じでありますが、中ではビンビンと強く打っている非常に弾力性のある脈です。この弾力性が弓のつるのような感じがするので洪脈といいます。

春、蛋白体が膨張しようとするとき、表面が柔らかくないと膨張できません。したがって、表面は柔らかく感じるが、少し指に力を加えますとビンビンと強く打っているような、外柔内剛になるのは、加熱作用によるものであります。

弦脈をみたら前は沈脈だと分かり、濇脈をみたら前は洪脈だったことが、これで分かるかと思います。このことは病脈のときに重要になります。

例えば、病気中にもし濇脈のような打ち方をしていたら、前までは高熱だったことが分かり、弦脈のような打ち方をして入れば、今まで体が冷えていたことが分かり、これで体温の上下の経過の推測がつきます。その強さによっては、これからもっと熱が増していくというようなことが推測せることができます。それを理解するためには、洪脈になぜなったのかということが分からなくてはいけません。したがって、その一番基本となる陽遁現象、陰遁の性質が分からなければ、これらのことが理解することができません。

難しいように見えますが、これらはひとつの真理が万化しているだけであります。どれもこれも根幹から見れば同じことを繰り返し説明し、展開しているだけであります。要は真理とは何かを知り、その展開の方法を知れば、あとは実際に応用するだけでいいのであります。