鍼灸オタクは早死にする 950

高血圧を考える 34

〇薬で下げる危険を示すデータ

▽18年後の健康状態は?

まず数値に関して、フィンランド調査の試験開始から、5年後、10年後で積極療法群、非介入群の血圧、コレステロール値などがどう変化したかをみます。

積極療法群では、開始時の平均148/96(最大血圧/最小血圧)から、5年後の介入終了時には135/88、さらに積極療法終了から5年後=10年後には、141/89と変化していきました。積極療法終了と同時に降圧剤など服用をやめる人は多く、血圧は高めに戻っています。

一方、非介入群では、最大血圧/最小血圧は146/94(開始時)→142/91(5年後)→142/89(10年後)とあまり大きな変化は見られません。

降圧剤の使用者の割合は、積極療法群では0%(開始時)が32%(介入終了時)になり、27%(10年後)となりました。一方、非介入群では0%(開始時)が15%(5年後)となり、22%(10年後)となりました。

また、コレステロール値でみますと、積極療法群では276(開始時)→260(介入終了時)→275(10年後)となり、非介入群では275(開始時)→276(介入終了時)→275(10年後)となりました。

コレステロール低下剤の使用は、積極療法群では0%(開始時)→37%(介入終了時)→2%(10年後)、非介入群では0%(開始時)→0%(介入終了時)→2%(10年後)となりました。

血圧、コレステロールとも積極介入をしなくなってから、おおむね似たような経過をたどっています。

このような結果を踏まえたうえで大事なのは、重大な合併症による死亡はどちらの群で増えたのか減ったのか、総死亡数はどちらが多いか、という問題です。

追跡調査の結果、18年後(介入試験終了13年後)の死亡数は、非介入群65人に対して、積極療法群は95人となりました。この結果、非介入群に対する積極療法群の死亡相対危険度は1.5倍となり、5年間介入しておせっかいをやいた結果、死亡危険度が5割増えたのです。これは5年間の薬剤使用などの影響が、その後も持続したと考えられます。死亡者総数は50%ましでした。

また、脳卒中など心臓病以外の循環器の病気による死亡は、非介入群7人に対し、積極療法群3人と、非介入群の方が数的には若干多くなっていますが、全体数が少ないので、両群で統計学的に有意な差はありませんでした。

しかし、心臓死では積極療法群の39人に対して、非介入群では19人と差が大きくなり、心臓死の相対危険度は積極療法群の2倍以上になりました。

また、事故死や自殺といった外因による死亡割合は、非介入群の1人に対して、積極療法群では16人と、相対危険度は16倍にも達しています。このことから、降圧剤など薬剤が、うつ病などの精神系疾患と何らかの関係があるのではないかと考えられます。事故死に関しては、反射神経を鈍らせるような作用が薬剤にあると考えられます。

がんによる死亡は、積極療法群の27人に対して非介入群では29人と、若干非介入群が多くなりました。この点では先に述べたNIPPON研究や茨城県の調査、JATE研究とは異なる結果となりました。

結果の異なる理由を断言するのは難しいですが、フィンランドの試験では降圧剤として、カルシウム拮抗剤がほとんど使われていないことが挙げられるかもしれません。カルシウム拮抗は日本の試験では代表的な降圧剤として使われ、今も一般的に使われています。しかしフィンランド調査で主に使われた薬は利尿剤とβブロッカーです。また、死因の病気のパターンが、日本とフィンランドでは異なります。日本ではがんが一番多いですが、フィンランドでは心筋梗塞をはじめ圧倒的に心臓病が多いのです。このことも関係していると思われます。

いずれにしろ、よかれと思って始めた介入試験でしたが、結果はことごとく裏目に出てしまったのであります。高血圧に起因する死因の中で最も多い心筋梗塞や脳卒中でさえ、フィンランドで実施した積極療法では改善されませんでした。

このことは心筋梗塞や脳卒中が減少している日本において、もはや血圧を下げることがよいことをしているといえるのか、真剣に考え直す必要があることを示しています。

参考文献・引用・2005年・『高血圧は薬で下げるな!』・角川書店・P104