鍼灸オタクは早死にする 958


高血圧を考える 36

〇薬で下げる危険を示すデータ

▽60歳未満でも180/100まで無治療でよい

これまで述べてきたように、高血圧治療の利益と害のバランスを考えますと、血圧は出来るだけ薬で下げないほうがいい、という様々なデータを示しました。しかし、それでも重症の高血圧の場合は、脳卒中などの不安があり、降圧剤を服用して下げようと考える人も多くいるかと思います。

では実際のところ年齢なども考慮して、血圧はいくつまでなら薬を使ってまで下げる必要はないのでしょうか。

詳しく紹介したNIPPON研究などの他に、日本における代表的な調査としては福岡県久山町、秋田県、大阪府八尾市の調査などがあります。

全て詳しい調査は省きますが、久山町の調査結果を見ますと、血圧は上が140以上、下が90以上になりますと、男性でも女性でも脳卒中になる割合は確実に増えています。しかし、その多くは60歳以下の人であります。つまり、若くして高血圧になった人の危険度は比較的高いといえます。下の血圧でみますと、循環器の病気は80~90以上で増えていきますが、死亡率全体でみますと100以上になってから増えます。

自立度を示したNIPPON研究では、血圧値と総死亡や循環器死亡との関係についても分析されています。61歳以上の比較的高齢の人では、血圧が高くても総死亡や循環器の病気はそれほど増えませんでした。しかし、61歳以上の人でもさすがに上が180以上、下も110以上になると、心筋梗塞や脳卒中が増えるという結果が出ています。

しかし、この調査では最小血圧が60~69、70~79、80~89、90~99、100~109で比べてみますと、循環器の病気による死亡率でさえほとんど変わりませんでした。これは男性でも女性でも同じです。

この結果と自立度の結果はよく一致しています。死亡も考慮に入れた自立度でみますと、60歳未満でも上が180、下が100までは危険度が大きくありません。

71歳以上では、下が110以上あっても、慌てて引き下げる必要がないことが分かりました。それどころか、降圧剤で下げるとがんなど他の病気が増えて、自立した生活ができなくなると推察できます。その意味でも、2000年以前の旧基準の方がまだしも妥当といえます。

とくに70歳以上では、上が160~180、下が90~100程度でも降圧剤は全く不要で、無理に血圧を下げるには及ばないことは確かです。70歳以上の高齢者でも、とりわけ女性では厳しい基準は不要です。なぜなら実際、NIPPON研究では最大血圧が160~170の人は110~119の人に比べて、循環器死亡はむしろ少なめだからです。

60歳未満、あるいはもっと年齢が若くても、自立度を考えますと180/100程度までは、降圧剤での治療は不要かつ有害です。40歳~50歳代でときに180/100程度の値が出たとしても、すぐに降圧剤を飲むのはやはり不要かつ有害であります。それよりも前に、ストレスや睡眠不足、食事(塩分)、運動不足など、日常生活の中のある血圧を上げている要因を探してみましょう。心当たりのことが必ずあるです。それを改善すれば血圧は自然に下がっていくでしょう。慌てて薬を飲む必要は絶対にありません。

むしろ、薬を飲むと色々不都合なことは起こる確率が高まることを考えておかなければいけません。そして、80歳以上の人では、さらに血圧が高くても、降圧剤を使わないほうがよいかもしれないという可能性を示しています。

もしも適切な臨床試験を行った場合「75歳、あるいは80歳以上の人では上が190~200でも血圧は無理に下げないほうがよい」ことを証明する臨床結果が出るかもしれません。

降圧剤の種類にもよりますが、臨床試験を行う価値はあるかと思われます。

参考文献・引用・2005年・『高血圧は薬で下げるな!』・角川書店・P111