間取りに対する中心の考え方

▽間取りに対する中心の考え方

①落ち着く条件と方位

家全体の太極は中心部であり、方位の太極は天門であるといわれています。天門とは戌亥(西南)の方位であります。なぜ戌亥の方位を天門といいますと、天=主を指すことからきています。

家の天といえば主人のことで、乾の座は主人となります。これを具体的に説明しますと、まず安定か不安定かという点から考えます。安定とは落ち着くこと、不安定とは落ち着かないことであります。乾の方位は落ち着くという意味から、固定、定着を表します。定着すれば長い間には周囲の中心となり、リーダーとなっていきます。一家で言いかえますと、これが主人ということになります。定着している者は、何をしても強く、安定しているので権力を握ることにもなります。例えば、ピクニックに大勢でいった場合、休憩時間中、自分はどこに座っていいかと迷うことがあるかと思います。普通の人は、そのときに何を考えるかといいますと、まずは落ち着いた場所に座ろうと考えるのが普通であります。そして周囲に何もない平らなところよりは木陰や大きな石のそばなどで安定した場所を見つけて座ります。つまり〝少しでも落ち着いた場所〟を見つけます。これが人間の習性の第一であります。その次は明るい方に向いて定着します。暗い方に向かって座りますと、何かと不安定を感じるものであります。

これを方位に当てはめますと、乾と北に座ることになります。前述のとおり、乾は落ち着く方位で、家の中では中心になる座で、何をするときにも中心になるものがいなければ、事は運びません。中心になる者は周りの人々から尊ばれ、神の役目も果たしているのであります。

人間が落ち着く条件として、暗い方に背に、明るい方を前に選ぶのは、方位に関係なく考えられることであります。この良い例では、北側に窓がある場合は、方位だけを気にしていると、窓に背中を向けて座ることになりますが、実際には必ずしもそうなるとは限りません。ただ落ち着ける一つの条件として、窓の位置は重要なポイントとはなるかと思います。〝君子南面〟という言葉があるように、相手と対応する場合は、南面に座るのが良いとされています。このように場所は固定しても、考え方まで固定してもらっては融通が利かなくなってしまいます。いつどんなときでも応用が利くようにしておくことを忘れてはいけません。

②中心の部屋

一つの家の中で中心となる部屋を太極室と呼びます。これは家族でいいますと、主人がいて、主婦や子供、お手伝いさんなどがいる状態をあらわします。主人としての統率の象徴の意味があります。

部屋をつくるときには、まず中心者の部屋をよく設計して、間取りを決めていかなければいけません。人体に例えますと頭になります。この頭の働きが中心となって、物事が処理されていくのと同じであります。各自が自分勝手なことをやっていては、統制がとれません。

部屋をつくる時ときは、まず中心の部屋をつくり、その後でまわりの部屋をつくっていくというのが順序であります。例えば大きな家を建てる場合、たくさんの部屋の中で一番大きな部屋か、落ち着いた方位の部屋が中心の部屋となります。ここには主人が住むか、あるいは主人にかわる一家を支配する人が住むようにします。

場所的には必ずしも中心に設計しなくてもいいですが、なるべく位置を乾(北西)の方に寄せたほうが良い結果をもたらします。それからなぜ大きい部屋が良いかといいますと、お手伝いさんなど住む部屋よりも、主人の部屋が小さいと、お手伝いさんに軽く見られるなどして、主人としての権威がなくなるからであります。人間とは不思議なもので、大きい所に住むと、気持ちが大きくなり、小さい所に住むと気持ちが小さくなります。主人が大きな部屋に住むのは、家族構成上の成り行きであります。一つの部屋に家族全員が集まるようなときでも、主人の座というものは、ある程度の大きさが必要であります。

一家の中心の人物は、まわりのものに命令する権限を持っているので、中心の部屋のことを別名、命令部屋ともいっています。

ある家相の本には〝家の中心部に当たる所には、大きな部屋を必ず作るべきだ〟と書いていますが、このように言い切ってしまっては少し問題があります。それは、家のど真ん中に大きい部屋があると、構造上あまり格好のものができないからであります。また、大きな部屋を真ん中のもってきたために、外部との空気が遮断されてしまうことも考えられますので、むしろ、できるだけ乾か北側につけて中心部屋をつくるようにした方が良い結果でます。場所的には必ず中心でなければならないという規則はないと考えてよいです。

このことから乾の方位にある部屋は大切で、みだりに貸すと、〝ひさしを貸して母屋をとられる〟というような結果を生みます。これは気をつけなければいけません。

大きなアパートの間借りの場合は、いうまでもなく乾の方位住んでいる人の方が、権力が強くなります。だからこのような部屋にオーナーが住んでいる場合は、大変落ち着き、アパートの住人をうまく支配できることになります。しかし、主人以外の人がそこに住むようになりますと、その人は威張って、主人であるかのようにふるまいます。これはアパートにはつきものの悩み事であるかと思います。