歩くと一方に傾く、ろれつが回らない(脳梗塞)

脳の血管に起こる緊急事態を脳卒中といい、血管の症状によって次の3つに分類されます。

①脳梗塞:脳の血管が詰まる
②くも膜下出血:脳の動脈瘤が破裂する
③脳出血:脳の血管がやぶれる

脳梗塞は、動脈硬化でせまくなった脳の血管が詰まる、あるいは、頸動脈の血栓が血流に乗って脳へ飛び、それが脳の血管を詰まらせて起こることがあります。また、心臓のトラブルで不整脈が起こり、それが原因で血栓ができて、脳へ飛ぶことがあります。これは心原性脳梗塞といい、ときに即死するくらい大きな血栓が脳に飛んでいくこともあります。

脳の病気は激しい頭痛を想像しますが、脳梗塞に頭痛はあまりありません。激しい頭痛を伴うのは、くも膜下出血と脳出血で、とくにくも膜下出血は、脳動脈瘤が破裂した際に激しい頭痛が起こります。

痛みが少ない脳梗塞では、いかにその前兆に気づくかがカギとなります。このとき大きな情報となるのが、体の片側だけの異常です。脳の病気の特徴として、体の半分に症状があり、片手だけが動かない、片足を引きずるとか、必ず体の半分に異常が起きるのです。

そのため、歩くと一方向に傾いたり、ろれつが回らなくなったりします。ろれつが回らないのは、舌がどちらか一方に曲がっているため、うまくしゃべられなくなるからです。顔の半分だけ麻痺して右と左に顔つきが変わるなど、顔の表情の変化が起こることもあります。
おかしいと感じたときには、脳の異常がわかるバレーサインという検査をします。

両目をつぶって、手のひらを上にして両腕を伸ばし、前にならえのように突き出します。そして、目をつぶったまま10秒待ってから左右の腕の高さを見ます。

もし、片一方だけ下がっていたら、脳にトラブルが起きている可能性があります。
なお、片側だけの異常は、脳梗塞の前兆でもあらわれることもあります。一過性脳虚血発作と呼ばれるものです。血管が詰まったが、血栓が小さいなどで再び血が流れて、5~20分ほどで症状が消えます。

片手や片足だけ急にだらりとしたり、ろれつが回らなくなったけど直ぐに治ったり、といった脳梗塞の軽い症状が出た際は注意しましょう。気のせいとか症状が消えたとか思わず、必ず脳外科で検査を受けてください。それで助かった人が大勢います。

そのまま放置しますと、ほとんどはその後に脳梗塞を起こして、体に麻痺が残り、最悪の場合、命を落とすことになります。

〇何科に行くべき? 脳神経外科/救急車を呼んでください

参考文献・引用・2020年・『放っておくとこわい症状大全』・ダイヤモンド社