鍼灸オタクは早死にする 854

高血圧を考える 10

〇一般の内科にも広がる高血圧治療

1964年に米国の退役軍人病院の調査で用いられた降圧剤は、交感神経を抑えるレセルピンとヒドララジンという血管拡張剤、ゆるやかな利尿剤の三種類を組み合わせたものでした。レセルピンとヒドララジンが日本で発売されたのは1954(昭和29)年でした。利尿剤のヒドロクロロチアジドが発売されたのは、その5年後の1959年です。

今でもこれら3種類の薬は、それぞれ単独でも同じ組み合わせでも日本で販売されています。しかし、利尿剤以外のレセルピンとヒドララジンは、すでにより安全で確実な降圧剤にとって代わられほとんど使用されていません。ただ、利尿剤だけは現在でも最も高い評価を受けている降圧剤です。しかし、安価過ぎて有難みがないためか、情報の歪みのためか、日本で使う意志はほとんどいなくなりました。それでも、カルシウム拮抗剤、βブロッカー、ACE阻害剤が導入されるまでは、一番使いやすい降圧剤が利尿剤でした。

その当時日本では、戦後の貧しい状態からようやく抜け出し、食生活がある程度豊かになってきて、急性感染症が減ってきました。それに代わって主役に躍り出たのが、脳卒中、がん、心臓病の三大死因でした。生活習慣病の始まりです。

さらに化学合成が発達し、それまで貴重品だった薬が大量に合成できるようになってきました。比較的使いやすい前述の3種類の降圧剤が開発され、臨床医に使われ始めていました。

国民皆保険が1961(昭和36)年に達成されるとともに、日本国民は医療機関にかかりやすくなり、医師は治療費のことを心配せずに、医療を行うことができるようになってきました。国民皆保険は、大部分の人が医療機関を受診しやすくなったという功績は大変大きいのですが、一方で薬の大量消費、薬害を生む原因になったことも考える必要があります。

参考文献・引用・2005年・『高血圧は薬で下げるな!』・角川書店・P44