鍼灸オタクは早死にする 956

身体訓練法

レッスン9-2

〇空間関係による動作の整合

▽何をしているか知らなくても行動できる

今までの動作は単純なものではありません。すぐには上手く出来ないでしょうし、また、そうしなければいけないわけでもありません。

頭部のある個所で行っている動きが、そこでは完全に理解しているのに、別の箇所では理解していないことが起こっているということは、本当に驚くべきことです。明らかに我々は自分のしていることが分からないままに、色々なことを行っています。実際、我々は頭部で行う全ての動きを感じとるのではなく、その動きの一局面に気づいているに過ぎないのであります。

▼注意の焦点を耳たぶから鼻に移し、また元に戻す

鼻の動きを続けながら、動きを妨げないで、注意の焦点を耳たぶに移します。鼻が規則正しい動きが続けられるように、耳たぶで円を描きます。耳たぶの動きの方向はどうなっているのでしょうか。耳たぶと肩をつなぐゴムひもの状態がどのように変化したかを観察します。先程と同じ動きではなくなっています。鼻の動きの線は変化したでしょうか。再び注意を鼻に移し、鼻で円を描きます。そこでもう一度、耳たぶの動きの線を点検します。耳も鼻も共に同じ頭の一部分なので、ある個所が円を描けば、別の箇所も(それとともに残りの頭の部分も)円を描くと考えられるかもしれませんが、問題はそれほど単純ではありません。

▼左の眼でみる

鼻で円を描く方向を逆にし、針を反時計回りに動かします。両眼を閉じ、左眼に注意を集中します。その眼は実際にどこを見ているのでしょうか?閉じた左眼で、両眼の中間の鼻柱を見ようとします。ついでに、外に向け、左の眼の左隅を見ます。その間、鼻の円運動は続けます。たいていの人は、数回試みてもはっきりとした答えが見つけられなくてあきらめてしまいます。おそらく、この動きに慣れなくては、答えを見つけることはできないでしょう。

左眼が円を描くように動かしてみて、これが鼻の円運動にどのような効果を及ぼすか確かめます。

休息します。

▼架空の絵筆で頭の左半分に色を塗る

両脚を組んで床に座りくつろぎます。鼻で右まわりの円を描きながら、指二本幅くらいの架空の絵筆で、頭の左半分に色を塗ります。左手で筆を持ち、頭を縦に二分する線の左側に沿って、指二本分の幅の線を描くつもりで、まず肩に近い大きい椎骨から始め、首筋から後頭部へと筆を動かします。さらに頭の上を回って顔の方へ、額、左眼、頬、上唇、下唇、あごから下あごをまわり、首の左側から鎖骨まできます。そこから再び同じように逆戻りし、首の後ろまで行きます。さらにその外側に絵の具の線を加え、顔と頭の左半分と左肩までを全部塗りつぶします。

▼鼻を左回りに動かしながら頭の左半分に色を塗る

しばらく休息してから、鼻の動きの方向を逆にします。もう一度頭の左半分に色を塗るのですが、今度は今の筆の運びに直角の方向に筆を動かします。すなわち、筆を左右に動かして、頭と顔の左半分をもう一度塗りつぶします。色を塗る動きが鼻の動きを邪魔するのか、もしそうであればどの部分で、筆の方向を変えるときなのか、筆が通るところはどの部分も同じ感覚で感じとれるか、それとも筆の通るのがはっきりわからなかったところがあるか、どの部分で呼吸が妨げられるか、どの箇所に筋肉の緊張が起こり動きの中断があったか、それは眼か首か肩か横隔膜なのか、などを考えます。

休息します。

▼部分から部分へ注意を移す

左回りの鼻の動きを続けます。この動きを続けながら、あごで円を描こうとします。しばらくやってから、あごの左端、耳のすぐ下の部分を実際に動かしているのだと思ってみます。それから、左のこめかみに、さらに、頭の付け根の頸椎と左耳との中点に注意を移します。

それぞれ5回から10回繰り返しますが一か所終えたら、一度動きの中心を必ず鼻に戻してから次の部分へ移します。頭と顔の左半分のあらゆる部分が同じようにはっきりと、ひとつの内部の力で動かせるようになるまで繰り返します。

休息します。

▼右脚を立て左ひざを床に

左ひざを床につけ、右脚は立てます。右腕を前へ、左腕を後ろへ伸ばし、共に肩の高さに支えます。両眼を閉じ、細いゴムひもが左耳と(後ろに伸ばしている)左手をつなぎ、もう一本のゴムひもが、左耳と(前に伸ばしている)右手をつないでいると想像します。鼻の回転運動を25回繰り返し、さらに逆回りにも25回繰り返します。二本のゴムひもが空間で伸び縮みする動きをとらえるように努力します。

▼右ひざを床に

短い休息のあと、今度は左脚を立て、右ひざを床につけます。左腕を前に、右腕を後ろに伸ばし方の高さに支えます。鼻の動きを繰り返しながら、ゴムひもの動きを観察します。

立ち上がって歩きます。右と左で頭の支え方の違いが分かるでしょうか。左と右で空間の感じ方が違うでしょうか。かかとの感じが、左足と右足で異なるでしょうか。確認しましょう。