鍼灸オタクは早死にする 968


身体訓練法

レッスン10-1

〇眼の動きは全身の動きを整える

このレッスンでは、眼の動きがからだの各部の動きを、どのように調整し統合するか、また、首の筋肉の動きと眼の動きが、どのようにつながっているかを学ぶことになります。眼と首の筋肉の関係をそれぞれ吟味しますと、からだの動きのコントロールが向上し、楽に動けるようになります。頭の動きとは逆方向の眼の動き、さらにからだの動きとは逆方向の頭の動きを行うと、多くの人が気づいていない動きの次元が生まれます。以下の練習は、行動の幅を広げるだけではなく、動きの間違った習慣をとり除くのに役立ちます。さらに、眼球の動きをコントロールする筋肉と視覚をコントロールする筋肉とを区別する能力が著しく高まります。

▽立ったままからだを左右にまわす

両足を腰幅で立って、両手は両脇にだらんとぶら下げたまま、からだを左右にまわします。からだを右にまわしたとき、右手は右から背中の方へ、左は右ひじを追いかけて、前から右の方へ動きます。左へまわしたとき、左手は左から背中の方へ、右手は左ひじを追いかけるようにして、前から左の方へ動きます。

身体をまわす動きを続け、眼を閉じます。頭を滑らかに動かすようにします。動きの方向が変わるごとに、まずどの部分からまわり始めるかをつかみます。眼なのか、頭なのか、腰なのか?答えがはっきりして、往復運動の始まりや終わりで動きを中断せずに、全身くまなくとらえられるようになるまで、この動きを何度も繰り返します。

眼を開き、同じ動きを続けます。眼を閉じていたときと同じように、眼が鼻の方を見ているかどうかを確かめます。そのようになっていないとするとどうなっているのでしょうか。頭の動きに先行している、視野の水平の線をとびとびに見ながら動いているかもしれません。

▽眼の整合と動きの滑らかさ

もう一度眼を閉じて、からだをまわす動きが、眼を閉じているときと開けているときと、どちらが滑らかでやりやすいかを感じとります。眼を開いて、閉じているときと同じ滑らかさで動こうとします。当然眼を開けている方が、あらゆる点で動きはよくなると思われるかもしれませんが、実際に行いますと、動きの滑らかさも動きの量も、しばしば妨げられるのが分かるでしょう。その理由は、多くの人の眼の動きが、筋肉の働きと適切に整合していないからであります。からだのあらゆる動きをコントロールする力にいずれ生じてくる変化を、はっきり意識できるようになるためには、まず両脚と骨盤の動きの感覚と、このまわす動きの中の細かい欠陥の全てを注意深く確かめなければいけません。

▽座ったままからだを右にひねる

床に座ります。左脚を左後方に曲げ、左ひざの内側を床につけ、左足も内側を床につけます。右の手のひらを床に置きます。右足をからだの近くに引き寄せて、右のふくらはぎがからだの前面と平行になるようにして、右足の裏が左ひざ近くの太ももに触るようにします。左手を前に伸ばして眼の前に上げ、左手でリードしてからだを右にひねります。右の動く左手の親指を眼で追いかけます。

正面に戻し、楽にまわせる範囲内で再び右にひねります。左ひじを曲げ、手のひらがさらに右の方まで動けるようにします。このとき眼は動かしてはいけません。つまり、頭と肩が右に動くときに、手のひらをじっと見ています。ゆっくりした動きを続け、楽にできる範囲を超えて右の方へ無理にひねろうとはしてはいけません。背骨も縮めてはいけません。すなわち、胸と肋骨を強ばらせないようにして、頭は高く支えてつつ、意識して真っすぐに座ろうとする努力はしてはいけません。左の手のひらの動きを眼で追いかけることを忘れないようにします。たいていの人は、手の動きが止まったのに、無意識的にさらにその先の右の方を見ようとします。それを指摘しても、まだ直らないことがあります。

あお向けになって休息し、背中と床の接触を点検します。

▽座ったまま上体を左にひねる

床に座り、両脚を右側に移し、先程とは左右対称の姿勢をとります。右腕を眼の前に伸ばし、上体を左にひねり、眼で右の手のひらを追います。手が左へ動くときに右ひじを曲げ、さらに左の方へ手のひらが動くようにします。はじめの姿勢に戻し、この左へひねる動きを25回繰り返します。1回ごとに、その前の動きよりも次の方が楽になるようにします。動き自体とその質に注意を集中し、眼が左へ行き過ぎないようにします。骨盤、背骨、首筋に注意し、肋骨に無駄な緊張が生じないようにし、楽な動きを妨げるものがどこかに無いかどうか気をつけます。あお向けになって、休息します。

▽眼の動きがひねりの角度を広げる

座って左脚を左後方へ曲げます。右脚を床にそって体の方へ引き寄せます。上体を右にひねり、右手を床につけて上体を右に傾けます。上体を右にひねっているので、当然手は先程程よりも遠くへ届きます。左腕を前方、眼の高さに上げ、上体とともに右へ動かします。左ひじを曲げ、苦しくない程度にできるだけ右の方へ左手をもっていき、そこで止めます。

このように上体を右にひねった姿勢のまま、眼を動かして左手よりも右の空間に移し、再び左手に戻します。このように左手の右側を見てから戻って左手を見るという動きを20回くらい繰り返します。頭を動かして、視線の方向を助けるといいでしょう。右端まで行ったときに、下り気味になるので、眼の動きは水平になるように気をつけましょう。

▽体を縮めない

この動きをやりくりするには、首を縮めないように注意しなければいけません。誰かが頭のてっぺんの髪をそっと引っ張り上、頭を持ち上げてくれているかのように、背骨を軽く動かさなければいけません。なお、左の座骨(尻の骨)を床から浮かせるようにすれば、動きが楽になります。休息します。

もう一度、左手でリードして右にひねる最初の動きを行います。ひねりの角度が前よりも大きくなり、しかも動きが一段と楽になったかそうか、確かめてみます。