しゃっくり

しゃっくりは、生理学的には横隔膜のケイレンのことで、一種の反射運動であります。昔から、しゃっくりが3日止まらないと死ぬなどいわれていましたが、重病のときのしゃっくりが長く続くのは、病気の経過がよくない証拠だとされています。

しかし、大部分はそれほど心配のないものであります。だが、本人にとっては気分のいいものではありません。

横隔膜を支配する神経は、頚椎の3・4番目の左右から出て、そのまま胸を経て、横隔膜を一定のリズムで縮めたり開いたりしています。これによって呼吸が行われているわけですが、順調にこのリズムが保たれなくなりますとしゃっくりが出ます。つまり、しゃっくりとは呼吸の変形の一種であります。

しかし、そう分かっていても今のところ内科的な治療法は確立されていません。鍼灸治療は、放置したら治りにくい症状も含め、ほとんどの場合に成功をおさめています。

◆メモ

しゃっくりは、隠れた胃腸病でも起こることがあります。胃がん、胃潰瘍、胆石症、肝臓病、すい臓がん、腹膜炎、腸閉塞などで、横隔膜に刺激が加わるために起こります。このほか、腹部手術の後で、横隔膜の下に膿が溜まったとき、呼吸器や心臓の病気のときにも起こりますので、しゃっくりがあまり長く続くときは、医師の診察を受ける必要があります。

-鍼灸治療編

◆主要なツボ

首   頚椎の側頸点、「天鼎
のど 「気舎」、「天突
腹部 「鳩尾」、「巨闕」、「中脘
背中 「膈兪

などがポイントになります。

◆治療法

指圧をする場合は、頚椎の3番目と4番目の中間両側にある側頸点を、両手の親指ではさむようにして、ゆっくりと押します。

次いで、「天鼎」を「天突」の方向へゆっくりと指圧します。この指圧方法は、両手の人差し指、中指、薬指、小指を使い、のどが苦しくならない程度に押します。その後、「天突」、「気舎」を親指で指圧します。このとき、あまり強く押さずに、左手に体の重心を置いたまま、右手で指圧します。

そして、背中の「膈兪」、みぞおちの「鳩尾」、「巨闕」、腹部の「中脘」などを次々と親指でしっかり指圧します。このとき、ただ押すだけでなく、押しながら小さくこねるようにマッサージをします。

胸とお腹を隔てる膜という意味で、東洋医学では横隔膜のことを隔膜といいますが、「膈兪」と「巨闕」のツボ押しは、ちょうどこの二つのツボが呼吸を司るおうかくまくしたがって、しつこいしゃっくりに悩む人は、「膈兪」と「巨闕」の両ツボの灸治療をするのも大いに効果があります。米粒大のもぐさを使って、一度に3~5壮くらいすえて、これを1週間続けますと、症状が軽快することが多いです。

◆しゃっくりの家庭療法

①普通のしゃっくりの場合は、コップで水を息をつかずに飲んで、気持ちを静めます。さらに、下腹に息をいっぱい吸いこんで、下腹を膨らますようにして、しばらく呼吸を止めると、次第にしゃっくりはおさまります。

②直立の姿勢をとり、のどぼとけの両側を親指と人差し指で押しても、しゃっくりがピタリと止まることがあります。

③患者をあおむけに寝かせ、術者は頭側にひざまづき、両手の人差し指から小指の4本の指をそろえて軽く曲げ、患者のまぶたのうえで指先で眼球を軽く圧迫します。コツは患者の呼吸を止めさせることです。頑固なしゃっくりでも、次第に回数が減るので、何回か繰り返します。ただし、これらの方法は、心臓の悪い方は避けてください。