鍼灸オタクは早死にする 942


高血圧を考える 32

〇薬で下げる危険を示すデータ

▽フィンランド調査

大規模に行われたフィンランドの介入研究の特長は、その期間の長さでした。

多くの臨床試験は長くても5年程度観察するだけです。しかし、この研究では介入(積極療法)を5年した後も追跡し、合計で18年間追跡しています。累積死亡率が40~60%にも上っているので、非常に貴重な研究になっています。

われわれが本当に知りたいと思うのは、目先の血圧の数値の安定ではなく、血圧が下げることによって実際にながいきできるかどうかであります。そのような長期の結果を知りうるという意味でも、フィンランドの調査は貴重であります。

この調査は、調査時点(1972~1973年)に38~54歳であった男性会社員を対象にフィンランドで行われました。

調査方法として、まず1972~1973年に健康診断を行い、心筋梗塞や脳卒中などの重大な病気を持っている人を除き、高血圧や高コレステロール、喫煙、肥満などの危険因子を有する人1222人を公平に2つのグループに分けました。

一方のグループ(610人)には、最小血圧が110以上ある人に対してだけ、医師を受診をした方がよい助言するだけで、と別な治療や指導、介入は何もしませんでした。これを非介入群といいます。いわばNIPPON研究や茨城県の調査での降圧剤非服用者のようなものです。

そして、もう一方のグループ(612人)には、まず食事指導や禁煙指導などの日常生活のアドバイスをしました。それでも血圧やコレステロールの値に改善が見られない場合には、降圧剤やコレステロール低下剤などの薬物療法が行われました。これを介入群といいます。日本の調査でいえば、降圧剤服用者に相当するといえます。「介入群」という呼び方はあまりなじみがないので、以後は「積極療法群」と呼びます。

積極療法群に対する食事療法は、口頭と文章で実施されました。食事指導の内容は、カロリーや飽和脂肪酸、コレステロール、アルコール、減糖、そして、積極的に魚や鶏肉、野菜を食べるようにという指導でした。

運動を増やすことや、喫煙者には禁煙の個別指導をして、受診期間中は繰り返し、これらのことを指導しました。そして、これらの指導にも関わらず、血圧やコレステロール値が目標(血圧の目標値は140/90未満、コレステロールの目標値は260㎎/㎗)を達成できなければ、降圧剤やコレステロール低下剤(プロブコールあるいは、クロフィブラート)が処方されました。

降圧剤は、主にサイアザイド系の利尿剤(ヒドロクロロチアジド)か、交感神経の働きを遮るβブロッカー(ピンドロールなど)が使われました。これらの積極療法(介入)は5年間行われました。

計画的な指導や治療がされなかった非介入群も、2年後、5年後、15年後、18年後に検査を受けました。

その結果は、積極療法群では5年間の努力の甲斐があって、血圧やコレステロールの値は非介入群よりも下がりました。血圧は、非介入群が最大血圧で146から142に4下がっただけでしたが、積極療法群では148から138に10下がりました。最小血圧は非介入群では94から91に3だけ低下しただけですが、積極療法群では96から88へと8下がりました。また、コレステロールは非介入群が平均276㎎/㎗であったのに対して積極療法群では260㎎/㎗に抑えられました。

さて、こうした5年間の努力の後、心臓病や脳卒中、総死亡などは積極療法群と非介入群ではどう変化したのでしょうか?非常に興味があるところですが、実はNIPPON研究のデータや茨城県の調査とよく似た結果になっていました。