◆東洋医学講座 246
〇心の実邪
▽心実邪の症状
▼胸支満
支満とはつっかえるという意味です。胸脇苦満などに使われます。苦しくて満ちる、またはつっかえるということです。
心臓に負担がかかると、だんだん心臓が肥大してきます。その肥大によって支満が起こります。もし、心の力が100のとき、300で使われると心の負担は大きくオーバーワークします。そして、心は肥大し、心の周囲の筋も肥大して胸がつっかえるのです。
心に生命力の限界以上の負担がかかると、今度は反対に心は硬直して心筋梗塞や狭心症となります。
現在は心臓病といっても、肝に起因している人が多いので、いま述べたことと多少違ってきます。
▼脇下が痛む
腋窩、胸脇のことで、肋骨の横の痛みです。みぞおちの心下痞魂も含みます。心下痞魂は、心と肝が悪いために起こります。
▼肩背、肩甲下が痛む
肩甲下はだいたい膏肓穴に当たります。これを一般では膏盲(こうもう)と読み違えて「病膏盲に入る」などと使われています。
これは病が膏肓にまで入ると深くて重症に陥っているのだ、という意味から転じて、物事に夢中になる、物事に固執するなどの場合に使われています。
膏肓のところまで痛むのは、腎・肝の病が心にまできていることを示し、重症です。現代人はほとんどが膏肓が痛んでいます。したがって、力がないし、根気もありません。小児まで膏肓の痛みを覚えているので、この小児の成人後を考えますと、今後はもっと重症患者や半健康体の人が増えることが考えられます。
この病気は薬などでは容易に治りません。摂生療法や鍼灸治療が効果があります。とくに筋肉の引きつりなどには、鍼灸がとても効果があります。
また、肩甲下、特に膏肓の部が痛むほど、心に影響していることを覚えてください。
▼上腕内側が痛む
上腕内側には心臓系の経路、心経、心包経、小腸経が走行しているのでここに痛みが発します。心と小腸は兄妹拮抗しています。そして、隣り合わせて経も通っているので、ここが痛む人は心・小腸が悪い人です。そのような人は、よく前腕を回外し、小指側を内側にして胸のところで物を抱き込むような格好をします。
肺の悪い人は、胸のところで、肘を曲げ、手首を垂らし、要するに幽霊の格好をします。これは肺と大腸の経が、橈側・拇指側を走っているためです。昔は肺病の人が多く、肺病になると肺の母である脾土の消化系が弱り、そのためにやせ衰えて死亡することが多かったのであります。