◆東洋医学講座 249
〇心の実邪
▽心虚邪の症状
▼胸騒ぎがする
騒ぐとは痛みの手前の症状です。かゆみはこれとはまた別の症状のことで、虚している状態に熱を加えられると起こります。かゆみのある人は心肺のバランスが悪い証拠です。肺は収斂しようとする働きであり、心は外表へ拡張しようとする働きがあります。これらはともに皮膚表面に働きますが、心力の方が強く、肺力を超えて破るとかゆみの症状が出ます。これをさらに確かめるためには脈診・腹診をします
上工の人は、人の顔を見ただけで分かる人であります。この診断には望聞問切の方法があります。望聞問切を行うためには、このような元の理を知っていなければいけません。
▼動悸がする
心臓が一定の働きで心動しているときは、動悸は起こりませんが、正常以外の働きをすると動悸が生じます。
例えば、心臓が正常の100の働き以上の働きをした場合や、あるいは他臓の働きは正常で心のみが正常値を下回った50の力しかなく、100の力を発揮しなければならないような場合は、亢進して動悸が起こります。
▼ぽーっとして顔色がない
ぽーっとして顔色がないのは、心が弱く、血液の循環が悪いためです。血色は本来赤色ですが、血色のないのは心が悪いか、または他臓が心より上回っていることを意味します。血色のあるなしは、顔色のあるなしと同じであります。したがって、色白でも、赤味がないのは、他臓に比較して心の力が弱く、肺の力が心より上回っているときです。このような人は、強烈な運動は体質的に向いていません。
また、標準色より赤味の強い人は、心旺で心の活発性を示し、活動的であり、発汗性が強く、情熱的である、次々と新しい方に発展していく人だということが分かります。
このように、わずかな兆候でも全てのことが分かります。昔から顔色を見ただけで、黙って座ればピタリと当たる、といいますが、このように分かるから当たるのであります。実際のところ、本人がそのような症状を呈して教えてくれるので、分かることは不思議なことでなないのであります。
▼舌根が強ばる
舌は心苗であります。舌が長く伸びて出る人は、心の強い人です。小児の舌は長く出ます。それは見て分かる通り、心が丈夫な証拠です。これに反して老人は、下が強ばって短いです。これは、心の弱いことを示しています。舌の強ばる状態は、心が萎えている証拠です。
▼憂い悲しむ
本来、心は陽気の臓ですが、心が虚して、さらに病になっていると、陽気を失って陰気になります。陰気とは悲しみ、憂える性質があるということです。
遠心性は陽気であり、遠心性から求心性に収斂する働きが沈着性となります。これが金性であり、これを超えると求心性が強く働き、陰気になります。
沈着というのは陰遁の働きはじめであり、憂い悲しむというのは陰遁が強く働いた状態です。心臓は陽遁の働きであるのに、逆の働きになっている場合には、心が弱っているのであります。
したがって、心が弱い、あるいは体質的に他臓に比べて心の力が低下していれば、陽気ではありません。
それでも陽気であれば、それは一過性のものです。このように心旺タイプではないのに陽気を装っている人は、家に帰るとシュンとしてるはずです。
要するに、憂い悲しむということは、陰遁作用であり、心虚に起因します。
以上の諸症は、心の働きいかんによって発症したものであり、どうしてこのような症状になったかを理解しなければいけません。
心疾の症状は、主に横隔膜より上に出ます。上肢の根は心肺であり、足の症状は肝腎が悪いために出てきます。したがって、足の悪い症状を診たら、肝腎が悪いことを知り、その上で他臓との相生相克も考え、何経を補瀉するかを知るようにしましょう。この計算ができないと、上手な治療ができません。