鍼灸オタクは早死にする 857

◆東洋医学講座 195

〇心と面色

▽心臓の華は面色である

▼五臓にはそれぞれの華がある

五華の〝華〟とは、花ということです。人間は五つの系統で成り立っているという考え方の上に立って説明しているわけです。

五系統の〝根〟である五臓は、体表面に働いている末梢的器官を華と称しています。華は表面に出ていて、外から見て一番分かりやすいところにあります。したがって、表面のその華の状態をみれば、その根っこの生理状態がよく分かります。

肝臓には肝臓の華、心臓には心臓の華があるというように、各々五つの華があります。

心臓の華は面色であり、肝臓の華は爪、脾臓の華は肌肉、すなわち肉の全て、人体の全てだといっています。肺臓の華は皮毛で、その外候は毛穴です。腎臓の華は骨で、これらは成立的な考えを中心にした説明であります。

肝臓の例でいいますと根っこは肝です。そして、幹になっているのは神経や筋肉です。枝葉は末梢の神経と筋腱です。そしてその先に花があります。それが爪であるということです。したがって、爪や眼は肝の外候で、末端の華や葉に見立てられています。体内を切り開いて見なくても爪の状態をみれば、肝臓の生理状態が分かります。

心臓の場合は、大動脈を幹として、小動脈を枝、その末梢を毛細血管として、心臓の働きが表面に現れる最も敏感な面色が華となります。皮膚には全て毛細血管が網の目のように入り組んでいるので、オーバーな表現をしますと、毛細血管で皮膚が作られていると考えてもいいかと思われます。そのような考え方をしますと、皮膚である毛細血管は心臓の末端であることが分かります。

したがって、面色をはじめ体血色をみれば、心臓の状態が分かります。とくに、面色は他の皮膚面よりも敏感に現れます。

脾の場合は消化器官が幹です。そして栄養を司ります。この栄養によって細胞が形成され、細胞によって肌肉(肉体)が形成されます。したがって、脾の末梢は肌肉、すなわち肉体です。脾の働きの現れを示す華は肌肉であります。

肺は経路を幹とし、絡路を枝とし、その先に皮膚の葉があります。皮膚には毛根、毛穴の華があり、これらを含めた皮膚が肺の表に現れた末梢器官です。

したがって、肺の華である皮膚の状態により肺の状態が分かります。つまり、皮膚の荒れ、艶、活気、体毛の有無、毛穴の大小などにより肺の働きが分かります。

血色は心の司るところです。活気は肺気より生ずるものです。この気は一番見にくく、心眼をもって見なければ見えません。

人の顔を見る場合、普通は顔色は間違いなく見られますが、活気をみられる人は少ないです。見ることの出来る人は心眼(神眼)の使える人です。肉眼を最高度に駆使したとき、心眼が現われてきます。

腎は水系です。血液、リンパ液、ホルモンを含む全体液が一つの幹となっていますが、体液は、例えばリンパ液がリンパ管の中だけに流れるのではなく、その働きや必要に応じて体内どこへでも流れます。

地上でも、水はどこまでも流れ、また浸透する性質を持っています。水に火を加えると水蒸気、水に水化力を加えると氷になって固型化します。これが水系中の水体であります。この考え方で理解できるかと思いますが、腎水の固型化したのが骨で、自然界では氷のようなものです。臓器構成では腎は、人体の一番深いところにあります。そして、腎の華である骨も深部にあります。骨の一番外候的なものは、歯と髪です。これらは骨の一部です。したがって、歯と髪をみれば、だいたい体内の骨質や腎の状況が分かります。

また骨の状態は、骨と骨のつなぎ目である関節を見ても分かります。したがって、関節の固いものや腰痛、関節痛は、腎の弱りだということになります。

このように人体には五臓があり、これらが五つ根となって、そこから幹、枝というような糸がたくさん出ています。それが相互に縄のように組み合い、絡み合い成立しています。このような状態を〝協同拮抗〟といいます。五本の指にしても、一本の髪の毛にしても、五臓器の働きが全て絡んでいます。ただ髪の毛は、腎臓系が象徴されているということであります。それを間違えますと、髪の毛は腎臓で成り立っているのだなどと勘違いしてしまいます。