斜頸

いろいろな原因によって、首が片側に斜めに曲がった硬縮位をとるものを斜頸といい、現在でもなお整形外科を訪れる小児の数は決して少なくないです。

斜頸には、先天的に頸部の片側が癒合する骨性斜頸、分娩障害などによる胸鎖乳突筋の短縮に伴う筋肉性斜頸、胸鎖乳突筋を支配する神経の麻痺やけいれんによる神経性斜頸、聴力や視力の差による耳性傾斜、眼性斜頸、原因不明で習慣的になった習慣性斜頸などがあります。

特に乳児などは頭蓋骨がやわらかいので、同じ体位で寝かせつける癖をつけてしまうと、頭蓋骨の歪みが固定してしまい頭の反対側に向けてもすぐに元に戻ってしまうようになります。

頭蓋骨の歪みは起こってしまいますと、なかなか矯正しにくいものであります。子供が寝ているとき、時々向きを変えてあげたり、授乳を左右交互にしたりするなどの、普段の予防対策を心がけなければいけません。

筋肉性の斜頸は、出産の際に新生児の首を無理やり引っ張るため、胸鎖乳突筋の部分的断裂や出血をきたし、のちにその筋肉の短縮を起こすことによるものだと思われます。しかし一般的には、このような斜頸は原因不明の先天的疾患として扱われることが多いです。これを放置しますと、顔の形まで歪んでしまうので早期治療が必要であります。

神経性斜頸には、疼痛のための斜頸、視力・聴力の障害のための斜頸、神経症性の斜頸などが属します。神経性の斜頸は年長児に多く、俗にいう寝違えに属するものがありますが、なかなか頑固な場合もあります。

斜頸と十分な診断のもとに適切な処置が行わなければなりませんが、その回復に当たっては、鍼灸治療や徒手矯正に頼るところが大きいです。

-鍼灸治療編

◆主要なツボ

首  「天柱」、「風池」、「翳風
のど 「天鼎」、「気舎
背中 「大椎」、「肩井

などがポイントになります。

◆治療法

まず、短縮した胸鎖乳突筋の筋緊張をとるために、後ろ首の「天柱」、「風池」、「翳風」、のどの「天鼎」、「気舎」、「天突」などに施術します。

その後、必ず徒手矯正を行います。これは患者の首、頭をベットのヘリからはみ出させておいて、術者はその健側に位置し、後頭部を手のひらで支え、患者の頭を患側に回しながら後下方にに引っ張ります。これを数回繰り返します。あるいはまた、両手で患者の側頭部を支えて身体全体をぶら下げます。

徒手矯正を終えたら、再び上記のツボを軽くマッサージをします。

3ヶ月以上治療をして改善がないものは医師と相談した方がいいでしょう。

上記のツボ以外の他、「天柱」や「中脘」、「天枢」、「肺兪」、「至陽」、「腎兪」なども使用するといいでしょう。

◆メモ

治療をする場合、ボール紙を綿とガーゼで包み、患側の方を高くして首にカラー様(カラー型副子包帯)に巻くことにより、首を正しい位置に保つようにします。

〇横くびの真ん中がこる場合には

後ろ首の僧帽筋と横首の胸鎖乳突筋の間には、さらに斜角筋、頭板状筋の二つの筋肉が走っています。その人の姿勢によっては、この斜角筋と頭板状筋に、とくに強いこりがあらわれることがあります。このようなときには、ぼんのくぼから耳の後ろを触ってみますと、硬直していることがあります。

この場合の処置としては、「天柱」、「風池」などを処置します。血行が盛んになり、筋肉中の老廃物が除去されます。

出来れば、施術前に後ろ首から横首にかけて、蒸しタオルで温めますと、いっそう効果が期待できます。