浴室の条件

▽浴室の条件

浴室は不浄の物を洗い落とすところであるので、トイレとよく似た性格を持っています。ただ違うところは、水をたくさん使うので、多量な湿気を含むという点であります。

水気は多くは水蒸気となって蒸発するので、周囲の湿気はどうしても上がります。このため、浴室は湿気てもさしつかえない位置を選ぶのが先決で、方位的にも、間取りの上でも、それを考慮に入れなければいけません。水気があっては困る場所、例えば寝室の隣などは最もよくないことになります。出来れば母屋と隔離して、下屋として造るのが最もよい相であります。

浴室が北正当にある場合は、病が多く、家族仲が悪くなるという凶相を示します。ただ、人によってはこの悪い意味が両方出てしまう人と、片方だけしか出ない人、また軽く出る人、重く出る人という違いがあります。

東正当にあると、子孫に疾病があって神経系がおかされます。子孫に害があるというのは、東は新しい細胞が生育されるとことなので、新しい細胞に悪い影響があります。つまり、子供に疾病が出るということであります。大人でも細胞の新陳代謝がうまくいかないことから、老衰しいやすいという点も考えられます。

南正当にある場合は、南は人体でいえば頭や眼に当たるので、ここに浴室があると、ノイローゼや眼病、心臓病にかかることになります。ことに、南は火なので水と合いません。さらに季節でいうと、南は夏になるので、南に浴室がある場合は、開けっ放しにして使うことが多くなって、水気が室内に入る率が高く、家中が湿気てしまいます。

西の正当に浴室がある場合は、婦人科系の病気にかかり、その他に、散財したり、口論が絶えなかったりします。

その他には色々ありますが、ことに男鬼門(東北)正当にある場合は、主人や相続人などその家の男子全員に悪い影響があり、放浪的になり、亡くなることもあります。

坤(南西)の方向には、水は禁物で、坤正当に浴室があると、妻女をはじめ女子全員に災いが起こります。また、恐怖症、狂気、ヒステリーになり、虚弱になります。坤をもって虚しいとするので、全てやる気をなくしてしまい、精神的に虚弱になります。

一方、乾(北西)の方は、一家の幸福の妨げる凶相となります。乾は家でいうと中心であります。身体でいえば内臓がおかされることになります。

以上が各方位の中でも悪い位置となります。これらは、運命学的観念からみた場合の凶であります。季節や環境によって、窓を閉めず、とくに日中に窓を開けっぱなしにすると、知らないうちに湿気が入り、身体に悪影響を及ぼすことがあります。

吉方位はいうまでもなく影響の少ない方位ということになります。それにはまず巽(南東)の泰気が挙げられます。東は一日の中や一年の中でも春や朝に当たるところで、地気上昇の盛んなところであります。水気は自然に昇る傾向があるので、家の中が湿気ません。そのような意味でも東は吉方と考えていいでしょう。

一般的にお風呂は、夕方や夜に入ることが多いので、夕方の風向きは、西からの大気・気流を指しているので、東にあれば、この西からの風向きで湿気が屋外に出ることになります。その意味で家の中は泰気となります。

東は巽に準じた考え方ができます。比較的空気中に水気がまじっても、大きな害は少ないと考えられます。

艮(北東)は条件付きの吉であります。その注意点は、風呂場には大量の熱と水の交流があるということで、酸素と水蒸気の関係を考えることが必要となります。すなわち、この方位の大気は冬期に旺気するので、冬は酸素が稀薄となります。その上、風呂場内は蒸気が立ちこめるので、昔の風呂釜などの吸気口は、入る空気が湿っぽくなり、火が燃えにくく不燃焼にさせます。そこで艮の泰気にするならば、できるだけ外からの換気をよくして、酸素がよく入るようにする必要があります。

風呂場に適している方位としては、巽、東北の泰気方位の順になります。

西の泰気は、一年でいえば秋に当たり、悪い影響はないと思われがちですが、一日に直せば夏の夕方に当たるので完全に隔離しないと、室内に多少の熱気が侵入することになり、吉相とは言い切れなくなります。

夏といえどもとかく夜は、北から南に向かって風が吹きやすいので、気流の関係は複雑で、要するにこの方位と四季の大気風向、そして、一日の大気作用を応用すればいいのであります。

トイレ、キッチン、風呂場をつくるときは考え方は同じで、方位関係なく本当は母屋から離して、別棟につくるのが望ましいのであります。言いかえれば、水気のある場所と人間が住むところははなした方がいいということであります。母屋と水気のあるところが一緒になっていますと、たとえ仕切りをしていても、水気が母屋に少しずつ流れたり、もれたりして、家中が湿気てしまいます。出来るのであれば、換気扇をつけて水分の排泄をよくする必要があります。また、下水を気をつけることで、排水がたまることがなく、スムースに流れるように心掛けるのも大切であります。

ガスの風呂の場合は、とくに浴槽と焚口を隔離するのがいいでしょう。これは、万が一ガスが漏れたときの場合を憂慮したものであります。風呂場と焚口が同じ場所にあると、どうしても風呂の中の酸素が少なくなり、水気が多くなり火が消えやすいのであります。

換気の点では、天窓にするのが一番良く、また出来るだけたかいところに窓をつくることであります。低い窓は、水気が天井や壁にこもってしまうので効果が少ないです。それに、焚口があれば、地面と同じ高さ位にガスの排気口が欲しいものであります。

浴室内は、水を吸わない防水セメントやタイルなどを使うのがいいでしょう。木の風呂桶をしよする場合は、ヒノキがよく、柔らかい木だと水を吸ってしまうのでよくありません。

風呂場はできるだけ脱衣所を広くして、洗濯機などを置けるように設計するのも一方法であります。風呂場はトイレと比べ使用度が低いので、その点を考慮してつくらないと不経済になります。

まとめとして、東の吉相の浴室と四季の大気との関係を例に挙げて説明します。

⑴冬の場合

冬は寒気が盛んなので、大気の中は水気が少なく乾燥しています。この季の大気は、北の方から家の中心に向かって侵入してきます。しかし、浴槽の水気発生源は東なので、大気は家の中には直接入り込まずに、東南方である巽の方の端を通り抜けて、南側から外に出ることになります。例え風向きが変わって大気が多く吹きこんだ場合も、空気中の水気がなく乾燥しているので、水気が大気に融和してとくに差支えはありません。それどころか風呂の熱気が加わり、室内が暖かくなるという利点があり、このような空気の関係からみて、冬期に関する東の浴室は吉相といえます。またこの場合、母屋から出っ張らせて、下屋式に隔離状態に造れば満点であります。

⑵春の場合

春は東から風圧が屋内に向かっていますが、この位置は東正中よりやや外れているので、強い当たりではありません。それにこの季節は天の気下降、地の気が上昇して新陳代謝の交流が激しく、とくに地気上昇が強いため、地上に水気が這うことがありません。そのため、比較的浴槽の水気は屋内にこもらず、屋外に上昇しやすいです。しかも窓を開閉する季節なので水気は屋外に出ていきます。また、この季節は酸素が豊富でその作用が盛んなので、人体の抵抗力が比較的強くなっています。多少の水気が侵入してきたとしてもあまり関係しないのであります。以上の説明でも分かるように、春期の場合でも決して悪相ではありません。

⑶夏の場合

夏は風向が南のために、東の浴室から気流が流れ込みません。夕方に入浴するときには夕方の大気が働いていて、東側に浴室があると、家の中心から外に水気が流れる構造であります。この季節の場合でも何ら支障もなく、このようなことからも吉相といえます。

⑷秋の場合

秋の風向は西なので、まさに吉条件といえます。

浴室は反対側に東であるので水気が外に流れて、屋内に入ることがなく、この季節も全く差支えがないのであります。

尚、艮(北東)の泰気方位も以上の働きとほぼ同じであります。おおよそこのような考え方で推していけば、古人のいう家相の吉凶が納得できます。