奇経八脉

奇経八脉について

奇経とは、十二経脉(正経)のように一貫した気血の運行に関連しない経脉をいいます。奇経の「寄」は不思議という意味で、奇経には八つの脉があり、各々が異なった通路と作用を持っています。

十二経脉(正経)は、気血を循環させるところの主経路でありますが、いつも順調に循行するとは限らず、何らかの原因によって正経から暴流して溢れたものが、あらかじめ準備した他の溝に入ると考えられました。この支流を奇経といっています。この溢れた気血は疾病の原因となり、治療を行なうのに際し、この奇経に入った気血の渋滞をなおすことも大切であります。

『十四経発揮』奇経八脉編には、

「脉に奇経あり、十二経は常脉なり。奇経八脉はすなわち常にかかわらず、故にこれを奇経という。けだししおもんみるに人の気血は常に十二経脈を行く。その諸経満溢するときはすなわち流れて奇経に入る。奇経に八脉あり、督脉、任脉、衝脉、陽維脉、陰維脉、帯脉、陽蹻脉、陰蹻脉あり、たとえばなお聖人の※1溝渠を図りもうけて、もって※2水隙にそなえ、これに乱溢の患無きがごとし、人の奇経ある亦是のごとし」

とあり、十二経脉(正経)は水路、川のようなもので、奇経八脉は湖のようなものとなぞらえています。

※1溝渠:給水または排水のため、水を通すように掘ったもの。みぞ。
※2水隙:硬い岩石から成る山脈を、河川が山脈の走向と直角に横断する場合につくる短い峡谷。横谷の一種。

注)督脉と任脉は、奇経八脉に属しますが、この二経は人体の前後正中線を走り、気血の運行する主要な一環を構成して、その上各々に専穴を有していて、他の奇経脉のように十二経脉の列に依存することなく、自らの経脉を持っています。ゆえに、任脉と督脉は十二経脉に加えて、十四経脉として用いる必要性がある経脉であります。

実際、任脈と督脉は病を治すのには必須で、欠くことのできない経脉であります。

〇十二経脉

●手三陰経
手の太陰肺経(LU) · 手の厥陰心包経(PC) · 手の少陰心経(HT)

●手三陽経
手の陽明大腸経(LI) · 手の少陽三焦経(TE) · 手の太陽小腸経(SI)

●足三陽経
足の陽明胃経(ST) · 足の少陽胆経(GB) · 足の太陽膀胱経(BL)

●足三陰経
足の太陰脾経(SP) · 足の厥陰肝経(LV) · 足の少陰腎経(KI)

奇経八脉

1.督脉
2.任脉
3.陽蹻脉
4.陰蹻脉
5.陽維脉
6.陰維脉
7.帯脉
8.衝脉