偏食について

偏食について

偏食とは、バランスのとれた正食と比べて、偏ったものばかり食べていることでありますが、その食べ物によって、あまり影響のないものと、少量でも影響が大きいものがあります。

含水炭素、すなわち糖質分の偏食は比較的許されますが、含水炭素を摂らない偏食は早く体調を崩しやすくなります。

これは、酒ばかり飲んで20年以上も元気で生活をして、風邪一つひかない人がいるように、糖質分は過食にさえならなければ、他の栄養素に化し、脂肪、蛋白質、無機質、ビタミンなど代償して生きていくことが出来るのであります。

偏食の最もいけないものは、自分の体質に合わないものを長く続けて摂ることであります。

例えば、肝旺タイプに人が、ジュースを好んで過量に飲んでいますと、体質の欠点である脾が、甘味と酸味に剋されて、ついで腎が水分と甘味に害されて、旺盛な肝まで酸味の過剰自剋となり、ついにバランスを崩して発症します。

このように、バランスを崩すことが発病の原因となるので、特に体質の弱点を傷つけることはいけません。

最近の偏食傾向は、糖質分の過食、フルーツの偏食、ジュース類、動物食の偏食が目につきます。この中でも糖質分の過飲食が多くみられます。

代表的な糖質過飲食物は、

①菓子類、冷菓類
②ジュース類、炭酸飲料(甘味が多く含まれているもの)
③フルーツ類(果糖が含まれている)
④白米、パン、麺類、せんべい類
⑤酒類

などです。

糖類といえば、甘いお菓子ばかり想像されますが、一般的な食べ物は大半が糖質なのであります。

ここで、現代の子供たちの悪い見本を挙げますと、上記の①~④までのいずれかを毎日ふんだんに飲食しています。特に四季を通して、ジュース類を飲み、お菓子やチョコレートアイスなどを飽きなく食べています。これは、先天的に強い生命力を持っていれば重症にならないですみますが、例えば、腎の弱い先天ならば、小児糖尿病、喘息、眼疾、耳労、夜尿症、ネフローゼ、尿道炎、貧血、脊椎カリエス、椎間板症、蓄膿症、口内炎、ベーチェット症候群など、腎機能低下の症状が出ます。体力によって、不摂生するとすぐに出る人と、長期に渡らないと発症しない人とありますが、このような生活を続けていますと、いずれ遠からず発症するものであります。

子供を例にとりましたが、大人も同じであります。大人の男性では、お酒を飲みすぎる傾向がありますし、女性は、お菓子やせんべい、フルーツなどを糖過剰して病気になっている人は少なくありません。

大体、糖質過剰は腎を損傷するのですが、その他、それぞれの体質の欠点が機能を損傷して発症します。

このほかにも、色々な偏食がありますが、まずは基本となる正食とは何かを知らなければいけません。

主食とは、いつも質が変わらないで、体にも悪影響を与えない恒常性をもった食品でなければいけません。この点から考えますと、味も恒常性をもった味であることが大切です。つまりあまり強くない中庸の味であります。

自然界の働きは、大きくは「五」に働き、五系統の質があります。味質でいえば、これを「五味」といいます。この五味の中で全部の力、つまり木・火・土・金・水の力を持ち合わせている質は、土質であります。土質が天気と化して木気となり、火気をつくり、金気、水気をつくります。

これを味で表現すれば、木味・火味・金味・水味となり、これらは土味が化したものであります。したがって、基盤となるものすなわち中庸味、恒常性をもつ味とは、土性の中の中庸の味となります。人の味覚で表現すれば、「甘味の薄いもの」ということになります。

甘味は、全ての味の土台となり、土質です。甘味の土質に、春気が加わると酸味になり、夏の火気が加わると苦味に、秋の収斂の気が加わると辛味に、冬の凝結の気が加わって内燃性の働きをする状態になる塩味の形に化していきます。

つまり、全て「土」が化していきます。このことは原子についても言えて、土系の原素である炭素を中心にして、他のものに化していきます。この点からも「自然界の真理は一つである」ということが理解できるかと思います。

以上のことから考えますと、主食とは、土性の中庸性をもったものでなければいけません。
人が甘いと感じない〝薄甘味〟、すなわち白米を粥にした甘味です。これを本当の〝うま味〟であると考えます。近年では甘味の強いものを、うま味と思われていますが、そうではなく土性の中庸性をもった甘味が本当の〝うま味〟というものであります。〝うまい〟という字は〝甘い〟という字を書きます。

主食は淡白で、少々甘味があって、いつ食べても飽きないもので、飽きるものは主食にはならず、また、そのようなものが毎日体内に入ると変調をきたします。

日本人は米を主食にしていますが、それは理にかなった優れた主食だと考えます。

外国では主食は異なりますが、それはその地方によって収穫されるものが違うためで、基本的な考えとしては、甘味の薄い糖質分が主食であることには変わりないと思われます。

主食の摂り方について考えますと、平均してずっと同じ主食を食べている安定主食摂取の方法と、もう一つは、副食的な状態を主食としていく場合があり、後者の場合は、変化してバランスをとりながら主食性にしていかないと成立しません。このように静的な面と動的な面とが組み合わさりながら、つまり、陰体をバックボーンとして、陽体が組み合いながら進まなければならないことになります。その進み方がずっと同じ行き方で進む場合と、バランスを変えながら同じ線で保とうとする進み方の二つに分けられます。安定摂取のみが標準ではないのであります。

そのようなことからいえば、最近の食事の摂り方は、非常に偏食的な摂り方をしています。それは副食が多いからであって、副食が多いということは、先に述べたように変化させながら一定の線を保っていかなければならないので、偏食になりやすくなります。

うまく中庸線(安定主食摂取)を上下しているのなら、バランスをとっていくことは出来ますが、現代では副食といっても、自分の好きなものを食べ、偏った形で常食のバランスをとっている場合が多いのであります。本当に体のことを考えて食べている人は少ないのであります。また、からだのためだ、と思って食べている人でも、案外誤った考え方をしている人が多いのであります、例えば、「ビタミンC は美容によいから」とビタミンCの多く含まれたものをたくさん食べている人がいます。このようなことをしていると、体は冷え、偏ってしまいます。

したがって、副食を多く摂るということは、偏食になりやすいということを理解できたかと思います。

ただ、五大栄養素を旬とともにうまく摂っている人は、副食を多く摂っていてもそうではありません。理由を分かってそのようなことをしている人は少なく、何か偶然にそうなっている人であるかもしれません。

以上のように、現代は偏食の時代であるといっても過言ではないと思われます。すなわち、食生活で病人が出現する時代であるともいえます。

偏食の悪い代表として、味の強いものを余計に摂っていることと、それに加えて時間や量などが問題になります。一般的に、一度に量を多く摂ることだけが過食と考えやすいですが、少しずつ過食した状態を毎日続けていくことも過食になります。

患者さんに「過食していませんか?」と尋ねますと、「いいえ、ご飯は半膳しか食べていません」と答えが返ってきますが、そのような場合間食を摂っていることが多いのであります。つまる、食事と間食とを別のものと考えているわけでありますが、口に入るものすべてが食なので、それが少しでも過ぎて、そして続くことは過食となります。

もう少し掘り下げてみますと、過食でも一過性のものと、少しずつの過食をずっと続けた結果の過食では、どちらが危険かということを考えてみます。前者の場合は一過性に機能低下しますが、悪性のものではない限り治りやすく、後者の場合は、このような状態を途中でやめることはおそらくできず、365日、10年、20年続けることになり、徐々に機能低下してしまいます。すなわち、急性と慢性の相違のような状態が起こってきます。

急性病は治りやすく、慢性病は治りにくいといいますが、それと同じで、慢性的に機能低下していったものは改善しにくいものであります。微量の過食の積み重ねが、結果としては非常に危険であるということはよく理解してください。

質は、味の強いもの、栄養度の高いものは、中庸性を超えているので、これらを過食することは、偏食の中でも最もよくありません。とくに、甘味の強い菓子類や冷たい飲み物は豊富に出回っていて、すぐに手に入りやすいために、これらのよって体は冒されやすくなります。ジュースやサイダー類は、一本に含まれる甘味は大した量ではないですが、水ものは量的に多く飲むものであるので、結果としては甘味の摂り過ぎとなり、人の生体に変動を与えることとなるのであります。果物中に含まれる果糖も同様のことがいえます。

したがって、甘すぎるものを多く食べるのが一番いけないことでありますが、うす甘いものでも量を多く摂るのもよくありません。

また、甘味に酸味や苦味が加わったものもありますが、こうなりますと一層問題が複雑になります。

人が主食としている米・麺類・パン類は良質の糖質分でありますが、やはり量を摂り過ぎることは糖質過剰となり、よくありません。

昔から「腹八分」や「腹七分」といい、健康で長生きしたければそうするようにいわれてきましたが、糖質過剰がいかに怖いことかが分かるかと思います。

酒類も同様で、もとは糖質で、とくに酒は一杯で止めることはなかなかできないので、結果として過量となります。この場合は、糖質の他にアルコールや他の物質が含まれているので、なお複雑になります。

以上のようなことを述べると、「いったい何を食べたらよいので」と思う人がいるかと思いますが。現代は栄養価の高いものをとるべきだといわれていますが、過ぎるという問題もあります。したがって、昔の、それでもやっていける、という最低線を基本とし、現代社会に沿った食品を添えていく形が標準であると考えます。

後は体質や、色々な条件によって異なるので、一概にこういうものであると断言はできません。

偏食には、食事としての偏食と、間食としての偏食がありますが、大きくいえば間食自体が偏食であるといえます。