長者の穴・丸子古墳


撮影年月日:昭和55年11月
撮影場所:田園調布一丁目地先

〇長者の穴・丸子古墳

小田急線向ヶ丘遊園駅を降り、桝形山に向かいますと、山の切り立ったふもとにたくさんの横穴が見られます。昔から土地の人はこの穴を「長者の穴」と呼んでいました。

入り口は、人ひとり入れるくらいの狭いもので、中に入ると奥の方は広くなっていて、下には小石が並べられています。そして、その中には、首飾りや土器、鉄のくぎなどがよくみかけられます。

また、久地の浄元寺裏の横穴では、刀や勾玉、なかには金銀でメッキした金属の耳飾りなど、だいぶ高価なものまで発見されています。

これらの横穴古墳は、ただの穴に過ぎませんが、内部の墓室が大変立派になっていることに気づきます。このような横穴は、長尾・下作延・新作・末長・井田など多摩丘陵の中でたくさん残されています。

このような横穴と、同じ時期につくられたのが丸子古墳です。この古墳は、丸子橋の西方100メートルの多摩川堤防沿いにあり、もと「お伊勢さま」と土地の人々から呼ばれる丸い塚でした。1921年(大正10年)に、多摩川の堤防をなおす工事が行われて、このとき、この塚は掘り崩されてしまいました。このときに、なかから男女の埴輪や弥生式土器、祝部土器、直刀などが出てきました。そして、丸い塚は、小さな古墳であることが分かりました。

その後、宮内や北見方などにも、小さな古墳が見つかりました。6~7世紀頃、多摩川沿いの低地に住んでいた豪族の勢力が分かります。